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発想は面白いが・・・、『慈雨』by柚月裕子

2020年03月17日 | 小説レビュー
『慈雨』by柚月裕子

~警察官を定年退職し、妻と共に四国遍路の旅に出た神場。
旅先で知った少女誘拐事件は、16年前に自らが捜査にあたった事件に酷似していた。
手掛かりのない捜査状況に悩む後輩に協力しながら、神場の胸には過去の事件への悔恨があった。
場所を隔て、時を経て、世代をまたぎ、織り成される物語。事件の真相、そして明らかになる事実とは。
安易なジャンル分けを許さない、芳醇たる味わいのミステリー。
「BOOK」データベースより


『孤狼の血』、『盤上の向日葵』に次ぐ、柚月裕子さんの三作目です。2019年4月に発刊されたので、結構新しい作品です。

とても評判が高かったので、図書館ですぐに予約しましたが、ようやく読むことが出来ました。

柚月さんは、相変わらず文章がとても上手で読みやすく、キャラクターの立て方や人物描写が上手です・・・、が、しかし、今作はなんともしまりのないストーリーでがっかりでした。

警察小説とお遍路を組み合わせて、おもしろい展開ですし、過去の事件と冤罪の行方、そして遅々として進まない現在の事件の捜査状況など、ハラハラさせる設定は良いと思います。

しかしながら、ミステリー小説として読んだ場合、犯罪が暴かれる瞬間の「なるほど!そういうことか!」という驚きや、「そういう犯人やからこんな時間差が!」という驚きは全然ありません。

さらに、冤罪の行方についても、ハッキリとした描写はありませんし、その後、神さんも鷲尾さんも緒方もどのようになっていくのかということが読者の想像に委ねられて終わります。

『慈雨』というタイトルの意味が最後の最後に登場しますが、「それほど?」というのが率直な感想です。

出版社の意向なのか、作者の意向なのかわかりませんが、ミステリー小説などと謳わない方が良いと思いますし、『孤狼の血』の雰囲気でやっていかれるのも一つの選択肢かと思います。

ギリギリなんとか
★★★3つです。
コメント
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