~没落貴族の家庭を背景に、滅びゆく高貴な美を描く『斜陽』。太宰文学の総決算ともいうべき、小説化された自画像『人間失格』。ふたりの若者の信頼と友情を力強く表現した『走れメロス』など、20世紀の日本が生んだ天才作家の名作11篇を収める。奥野健男氏のくわしい年譜、臼井吉見氏のこまやかな作品案内と作家評伝付き。「BOOK」データベースより
偉大な小説家「太宰治」氏の作品を今まで読んだことがなかったので、「何から読むべきか?」と悩んでいたところ、『斜陽』、『人間失格』、『走れメロス』という超メジャーな作品に加えて、『ヴィヨンの妻』、『桜桃』など「聞いたことあるタイトルやん」という作品、そしてその他に『ダス・ゲマイネ』、『満願』、『富嶽百景』、『葉桜と魔笛』、『駈込み訴え』、『トカトントン』、という短編が収録されている「お得感」抜群の文庫を見つけたので借りることにしました。
その上、巻末に奥野健男氏の太宰治年表、臼井吉見氏の解説と寸評付きなので、この一冊を読めば「俺、太宰治読んだで」と、言えるかも知れませんね。
さて、斜陽と人間失格で文庫本の半分ほどを占めており、読みごたえがありました、その他の短編も、全体的に暗くてジメっとした雰囲気の作風なんですが、読んでいて苦しくなったりすることはありません。
太宰氏特有のウイットの効いたジョークのようなやりとりや、登場人物(自画像ともいえる)の一風変わった雰囲気が楽しめます。
38歳で自らの命を絶った太宰治氏ですが、天才ゆえの苦悩や辛苦の実態ともいえる描写が、文章のいたるところに横溢しています。
色々な作風の短編中編が収められておりますが、僕は『斜陽』と『ヴィヨンの妻』が好きですね。
★★★☆3.5です。