~未曾有の災害に襲われた町。高校生のサナエは、幼い弟を連れて避難所に身を寄せていた。
混乱の中、押し寄せるマスコミの取材にねじれた高揚感を抱くサナエ。だがいつまでも目を背け続けるわけにはいかない、いつか訪れなければならない場所があった。
強く、脆く、そして激しく―喪失の悲しみと絶望の底からの、帰還の旅路。第61回群像新人文学賞受賞作。「BOOK」データベースより
色んな意味で話題になった作品であるらしく、内容を良く知らないまま図書館で借りてきました。
上記のコラムを読むと、なぜ本作が大きな議論を呼ぶことになってしまったのかが良くわかります。
さて、ストーリーの方は、東日本大震災の被災者である女子高生を主人公に、被災者が絶望の中から心の傷を乗り越え、成長していく様を描いた物語です。
書き出しから「これは、カメラマンの男性と若い女性が恋に落ちる話なのか?」と勘違いしたぐらい、何とも言えない導入部から始まります。
それから先は、東日本大震災の津波被害から何とか逃れることが出来た主人公の女子高生サナエの心理描写ばかりがダラダラと書き連ねられており、読んでいてしんどいです。
もう少し客観的な視点や俯瞰した感じの描写があれば一息つけるんですが、ずぅ~っと少女の心の中の世界、少女の瞳に映る光景ばかりで、飽きてしまいます。
あの未曾有の大災害を題材にして小説を書こうと思った筆者の勇気には敬意を表しつつも、読んで良かったとは思えない作品でした。
芥川賞の候補に挙がったぐらいなので、文学作品としては優れているのでしょうが、僕には合わなかったです。
★★☆2.5です。