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あまりリアル感が感じられず『凶悪―ある死刑囚の告発』by「新潮45」編集部

2020年07月15日 | 小説レビュー

『凶悪―ある死刑囚の告発』by「新潮45」編集部

「他にも人を殺しています。警察は把握していません」。死刑判決を受けた男が、獄中で衝撃の自白を始めた。被害者は複数人、首謀者はまだ娑婆にいる―はたして、奴の話は本当なのか!?闇に葬られた殺人をよみがえらせ、警察も動かした衝撃の取材記。「BOOK」データベースより

 

先に映画の告知CMを見てタイトルは知っていましたが、ようやく文庫版を読むことが出来ました。

犯罪のノンフィクションノベルズとしては、『黒い看護婦ー福岡四人組保険金連続殺人』、『消された一家 北九州・監禁連続殺人事件』、家族喰い 尼崎連続変死事件の真実』に次ぐ、4作目となります。

上記の3作は本当に残酷で凄惨な事件でしたが、それぞれのルポライターの方の執念ともいえる取材の成果によって、非常にリアルに描かれています。

一方、この『凶悪―ある死刑囚の告発』は、実際に犯罪を行った死刑囚と拘置所内での面会を通じて直接対話を進め、当時の事実を一つひとつ掘り起こしながら事件の全容解明に迫るという内容です。

しかしながら、ほとんどリアル感が感じられず、「新潮45」編集部の編集ということで、やはり色々な人のチェックが入った結果なのか?何とも面白くない作品になってしまいました。

作品のテーマが違うといえばそれまでですが、上記の三作は、「いかにして連続殺人が行われたか」、という情景をリアルに浮かび上がらせることに力を注いでいますが、この作品は、「いかにして私たちが警察や検察を動かしたか」という、少し自画自賛的な記述が鼻につく得という感じでしょうか。

いずれにしても、余罪を告発した死刑囚自身も死刑になるぐらいですから、どんなことを言おうが人を何人も命を奪っていますし、それも明確な殺意を持っていた訳ですからね。

確かに首謀者の「先生」と呼ばれる人物は凶悪だと思います。それだけに裁かれて当然だと思いますし、そこまで持っていけたのは、新潮45のスタッフさんの努力と茨城県警をはじめとする警察・検察の皆さんのお蔭です。

一方で、筆者も書いているように、まだまだ表に出ていない事件が山のように埋もれているという現実を思うと。自分たちも気を引き締めて、周りに目を配りながら、犯罪に巻き込まれないようにしなければなりません。

★★★3つです。

 

山田孝之, ピエール瀧, リリー・フランキーの主演で映画化されています。プライムに入っているので、早速観てみたいと思います。