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やや退屈ではあるが丁寧な筆記『蜩ノ記』by葉室 麟

2020年12月11日 | 小説レビュー

『蜩ノ記』by葉室 麟

~豊後羽根藩の檀野庄三郎は不始末を犯し、家老により、切腹と引き替えに向山村に幽閉中の元郡奉行戸田秋谷の元へ遣わされる。秋谷は七年前、前藩主の側室との密通の廉で家譜編纂と十年後の切腹を命じられていた。編纂補助と監視、密通事件の真相探求が課された庄三郎。だが、秋谷の清廉さに触るうち、無実を信じるようになり…。凛烈たる覚悟と矜持を描く感涙の時代小説!(平成23年度下半期第146回直木賞受賞作) 「BOOK」データベースより


構成・品格ともに高水準!『銀漢の賦』by葉室麟 に次ぐ、葉室作品二作目です。

「藤沢周平氏の作品より葉室作品を推します!」的な事を書きましたが、今作は、直木賞受賞作品と言われている割には、少し退屈でした。

主人公の戸田秋谷が、寒村に幽閉中であり、言葉少ない居士であるため、ググッと物語が盛り上がることはほとんどなく、郁太郎と庄三郎が家老屋敷に乗り込むシーンからクライマックスにかけてのあたりが唯一の盛り上がりと言えるでしょう。

少々退屈ではありますが、男の友情や武士の本懐、武家社会の不条理さ等がしっかりと丁寧に描き込まれていて、読んでいて気持ちの良い作品です。

戸谷秋谷の運命を変えることは出来ませんでしたが、本人が望んだ結末なので、これはこれで良しでしょう。

役所広司主演で映画化もされており、檀野庄三郎 - 岡田准一、戸田薫 - 堀北真希、水上信吾 - 青木崇高、松吟尼(お由の方) - 寺島しのぶ、戸田織江 - 原田美枝子など、とても観てみたい気がします。

★★★☆3.5です。