幼少時から両親に激しい暴力を受けて育った端爪北斗。
誰にも愛されず、誰も愛せない彼は、父が病死した高校一年生の時、母に暴力を振るってしまう。
児童福祉司の勧めで里親の近藤綾子と暮らし始め、北斗は初めて心身ともに安定した日々を過ごし、大学入学を果たすものの、綾子が末期癌であることが判明、綾子の里子の一人である明日実とともに懸命な看病を続ける。
治癒への望みを託し、癌の治療に効くという高額な飲料水を購入していたが、医学的根拠のない詐欺であったことがわかり、綾子は失意のうちに亡くなる。
飲料水の開発者への復讐を決意しそのオフィスへ向かった北斗は、開発者ではなく女性スタッフ二人を殺めてしまう。
逮捕され極刑を望む北斗に、明日実は生きてほしいと涙ながらに訴えるが、北斗の心は冷え切ったままだった。
事件から一年、ついに裁判が開廷する―。「BOOK」データベースより)
いやぁ~、不覚にも泣いてしまいました(T_T)
石田衣良氏の作品は、『池袋ウエストゲートパーク』以来です。
はっきり言って期待していませんでした(^_^;)))
しかし序盤の、両親からの凄まじい虐待の描写に、思わず引き込まれてしまいました。
家族にとって安住の場所であるはずの自宅が、虐待の凄惨な現場であるという救いようのない状況で、主人公の北斗は心に幾重もの鎧を重ねて自らを守ります。
肉体はズタズタに引き裂かれながらも、自分を客観的にとらえることで心を冷静に保つという、ある種の現実逃避を図る術を身に付けさせられたのでしょうか?
筆者は実際に児童虐待から逃れられた少年少女から話を聞き、寄り添うことによって、その心の奥底を知ることが出来たらしいです。
あまりに淡々と主人公について語られるので、かえって現実感があります。
奇跡的に虐待家庭から逃れることが出来た北斗は、綾子という里親と出会います。
己を捨てて、無償の愛をもって北斗の心の闇を照らし、温め続けた綾子に対して、北斗は戸惑いながら、迷いながらも、試行錯誤の末に心の鎧を脱ぎ捨て、その分厚い氷を溶かします。
しかし、その幸せな時間は長く続かず・・・。突然襲ってきた綾子の末期癌によって、不幸の連鎖が始まってしまいます。
綾子の死によって、北斗の心は再び闇に閉ざされます。
この時点で本の残りページは半分以上あるので、「復讐を遂げるまでのストーリーで残り半分やな」と思いきや、僅か50ページあまりで復讐は失敗に終わり、北斗は逮捕されてしまいます。
それから長い拘留生活を経て、いよいよ裁判が始まります。
そこから200ページを費やして、法廷闘争が行われますが、北斗の心の移り変わり、姉の明日実、高井弁護士の献身、被害者家族、裁判官の心理を見事に表現してくれていて、最後には涙が溢れました((。´Д⊂))
読みごたえのある長編であることは間違いなく、また、児童虐待、里親制度、死刑制度などについても、深く考えさせられる小説でした。
★★★★4つです。
誰にも愛されず、誰も愛せない彼は、父が病死した高校一年生の時、母に暴力を振るってしまう。
児童福祉司の勧めで里親の近藤綾子と暮らし始め、北斗は初めて心身ともに安定した日々を過ごし、大学入学を果たすものの、綾子が末期癌であることが判明、綾子の里子の一人である明日実とともに懸命な看病を続ける。
治癒への望みを託し、癌の治療に効くという高額な飲料水を購入していたが、医学的根拠のない詐欺であったことがわかり、綾子は失意のうちに亡くなる。
飲料水の開発者への復讐を決意しそのオフィスへ向かった北斗は、開発者ではなく女性スタッフ二人を殺めてしまう。
逮捕され極刑を望む北斗に、明日実は生きてほしいと涙ながらに訴えるが、北斗の心は冷え切ったままだった。
事件から一年、ついに裁判が開廷する―。「BOOK」データベースより)
いやぁ~、不覚にも泣いてしまいました(T_T)
石田衣良氏の作品は、『池袋ウエストゲートパーク』以来です。
はっきり言って期待していませんでした(^_^;)))
しかし序盤の、両親からの凄まじい虐待の描写に、思わず引き込まれてしまいました。
家族にとって安住の場所であるはずの自宅が、虐待の凄惨な現場であるという救いようのない状況で、主人公の北斗は心に幾重もの鎧を重ねて自らを守ります。
肉体はズタズタに引き裂かれながらも、自分を客観的にとらえることで心を冷静に保つという、ある種の現実逃避を図る術を身に付けさせられたのでしょうか?
筆者は実際に児童虐待から逃れられた少年少女から話を聞き、寄り添うことによって、その心の奥底を知ることが出来たらしいです。
あまりに淡々と主人公について語られるので、かえって現実感があります。
奇跡的に虐待家庭から逃れることが出来た北斗は、綾子という里親と出会います。
己を捨てて、無償の愛をもって北斗の心の闇を照らし、温め続けた綾子に対して、北斗は戸惑いながら、迷いながらも、試行錯誤の末に心の鎧を脱ぎ捨て、その分厚い氷を溶かします。
しかし、その幸せな時間は長く続かず・・・。突然襲ってきた綾子の末期癌によって、不幸の連鎖が始まってしまいます。
綾子の死によって、北斗の心は再び闇に閉ざされます。
この時点で本の残りページは半分以上あるので、「復讐を遂げるまでのストーリーで残り半分やな」と思いきや、僅か50ページあまりで復讐は失敗に終わり、北斗は逮捕されてしまいます。
それから長い拘留生活を経て、いよいよ裁判が始まります。
そこから200ページを費やして、法廷闘争が行われますが、北斗の心の移り変わり、姉の明日実、高井弁護士の献身、被害者家族、裁判官の心理を見事に表現してくれていて、最後には涙が溢れました((。´Д⊂))
読みごたえのある長編であることは間違いなく、また、児童虐待、里親制度、死刑制度などについても、深く考えさせられる小説でした。
★★★★4つです。