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シンガポールの12歳の少年が作詞作曲した医療従事者への「エール」が素晴らしい!

2020-04-07 15:42:02 | シンガポール
新型コロナウィルスが世界中で猛威を振るっていて、終息の兆しがなかなか見えません。私は現在、シンガポールにいますが、4月7日から規制がさらに強化され、政府は”Circuit Breaker”(サーキット・ブレーカー)と呼んでいますが、必要不可欠な業種以外は、在宅勤務のみとなり、学校は在宅指導、飲食店は持ち帰りまたは配達のみの営業となりました。バーや映画館、劇場、ナイトクラブ、カラオケなどは3月26日から閉鎖されており、学習塾や、宗教行事も中止となっています。

スーパー、コンビニ、マーケット、食料品店、薬局、理容・美容院、ランドリー、および公共サービスなどは引き続き営業しています。政府は再三、生活必需品は常に十分な量が供給されるので買いだめをしないようにアナウンスしていますが、トイレットペーパーや、ハンド・サニタイザーは、どこでも十分な量があり、マスクもしばしば見かけることがあります。用事がない限りは、なるべく家に留まるよう推奨されていますが、近所をジョギングすることは禁止されているわけではありません。

新型コロナウィルス蔓延の状況を、「戦い」と認識している国が多いですが、徴兵制度もあり、いざという時は国のため、家族を守るために戦うという意識の高いシンガポールは、今回の新型コロナウィルスに対しても、みんなで力を合わせて戦おうという認識が強い気がします。

映画の“Independence Day” (インディペンデンス・デイ)の中で、宇宙から侵略してくる敵に対して、全員が命がけで戦います。それを可能にするのが、映画の中の大統領の演説です。シェイクスピアの『ヘンリー5世』を下敷きにしていると言われているストーリーですが、圧倒的な敵軍を前にして、リーダーの見事な演説で、集団が百人力のパワーを発揮し、奇跡的に勝利するという話です。両者とも、その演説の目的は、戦いの意義をいかにわかりやすく、印象に残る言葉で伝えるかということ。つまりモチベーションを最大化するということです。

新型コロナの状況においては、それはリーダーの説明の仕方だったりするのですが、人々の気持ちを一つに束ねる効果のあるものとして、日常の中から自然に生じてきた音楽や、映像コンテンツが、その役割を担うことがあります。例えば、昨年の香港民主化デモの際、各所で歌われた『願榮光歸香港』(香港に栄光あれ)の歌。私は、香港に4年ほど住んでいて、雨傘運動で戦う学生たちの姿も見ているので、その歌を聴くと、涙が出てきます。

さて、やっと本題に入りますが、今回の新型コロナウィルスの状況の中で、私が注目している一つの曲があります。Jacob Neo (ジェイコブ・ネオ)という12歳の小学生が作詞・作曲した “Unite as One”(ユナイト・アズ・ワン)という曲。日本語に訳すと、「ともに力を合わせよう」という感じですが、昨年の流行語にもなった「ワンチーム」に近いニュアンスですね。

Fairfield Methodist (フェアフィールド・メソジスト)という小学校の6年生のジェイコブ君は、昨年参加したプログラムで曲の作り方を学んだばかり。最近始まったNHKの朝ドラ『エール』の主人公の裕一君のような展開ですね。新型コロナウィルスで頑張る医療関係者に対して、まさにエールとなる曲を作りたいと思ったのです。

完成したこの曲は、2020年2月27日に、シンガポールのナショナル・ユニバーシティー・ホスピタル (NUH)の医療関係者に贈呈されました。また、その際に、クラスメート全員が、感謝のメッセージをカードに書いて、それも合わせて贈られたとのこと。病院のスタッフが感動したのはもちろんです。

この曲が、学校の先生たちの協力のもとミュージック・ビデオとなり、ユーチューブでも話題になりました。こちらがそれです。



この歌詞についてもっと知りたいと思う方のために、翻訳をつけておきます。
適当に訳したものなので、あくまでも理解の参考としてみてください。

You’re shut away, you’re isolated
あなた方は、閉じ込められ、隔離され、
Cut off from civilization
文明と切り離され、
All alone with your hopes and dreams
一人だけで、夢と希望だけを糧に
Shuttered, no longer free
遮断され、もはや自由はない
But I want you to know that
でも、皆さんに知っておいて欲しい
You’re not alone
皆さんは決して独りぼっちじゃない
And I want you to feel that
そして、皆さんに感じて欲しい
You are at home
皆さんは家にいるのだと

And the night looms, the sun goes down
そして夜が忍び寄り、陽は落ちる
Day bleeds and light’s just a memory, memory
陽は赤く滲み 光はただ記憶となる、記憶となる
The ‘crowns’ are invading us what can we do
コロナが我々を侵略してくる 僕らに何ができるだろう
This is agony, Yeah!
それは苦しみでしかない
But we’ll be together through thick and the thin
でも、どんな時も僕らは一緒だ
As one country we fight this virus and win
一つの国として、僕らはこのウィルスと戦い勝利するんだ
We’ll fight with our hearts and our minds and our souls
心で、精神で、魂で戦うんだ
Protecting this island where we call our home
僕らが「ホーム」と呼ぶこの島を守るんだ

Fearful yet advancing
怖いけれど、一歩前に踏み出した
Fulfilling your duty and call
そして自分の責任と使命を果たそうとしている
Knowing that there is a purpose
そこには大きな目的があると知っていて
Press on. Stand firm for all.
自ら進んで、みんなのために決意を固めている

Singapore. We’ll stay together
シンガポール、僕らは共に存在している
Singapore. The time has come
シンガポール、時は来た
Singapore. We’ll fight forever
シンガポール、永遠に戦う
Singapore. Unite as one
シンガポール、一つになろう

素晴らしい歌詞ですね。コロナとの戦いにおいて最前線で戦っているのが、医療従事者。感染するリスクに日夜直面していながら、治療や検査を行う彼らの苦労は大変なものがあります。その努力に、感謝の気持ちを捧げることにより、医療関係者も疲労で忘れかけてしまいそうになる自分の使命を再認識できる、そしてそのことで、非常時であっても、非常時だからこそ、社会の絆が強化されていくという、シンガポールは、そんなエコシステムができている稀有な国なのだと思ったりするのです。

’crowns’ are invading usという一節がありますが、ラテン語の「コロナ」というのは元々は、王冠という意味です。太陽のコロナは、王冠のように見えるのでそう呼ばれているのですが。コロナウィルスは、顕微鏡で見ると太陽のコロナのように見えるので、コロナウィルスと呼ばれるようになったのだそうです。太陽のコロナと王冠とコロナウィルスの関連性を気づかせてくれたジェイコブ君、すごいですね。

シンガポールには、この曲以外にも、メディアコープが作った曲とか、ディック・リーが作った曲とか、ラップの曲とか、コメディアンのガーミット・シンの曲とか色々とあるのですが、このジェイコブ君の曲が今のところベストですね。

とかくギスギスしてしまいがちな非常時には、このようなコンテンツが必要だと思います。
コメント
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