昨日は、満月、フラワー・ムーンでしたが、こちらの写真は、実際の月ではなく、昨年、シンガポールのアート&サイエンスミュージアムで展示されていた巨大な月のインスタレーションで、ルーク・ジェラム(Luke Jerram, 1974 - )という英国のアーティストの”Museum of the Moon” という作品です。
数年前、このブログで、月にまつわるつきない話 (2013年9月21日)というタイトルで書いたのですが、満月で思い出すのは、「但願人長久」(タンイェンレンチャンジュウ)という曲です。最初に歌ったのは、アジアの歌姫、テレサ・テン(1953 – 1995)でした。こちらがその動画です。
月を見ながら遠く離れた相手に思いを馳せるという内容の歌です。歌詞は宋代の詩人の蘇軾 (そしょく、1036 - 1101)の詩をそのまま使っています。日本では平安時代ですね。
この歌詞を、大雑把に現代語にしてみると、こんな感じになります。かなり意訳していますが。
「酒で酔ったついでに聞くんだが、いつから名月がそこにあるの?天上の宮殿では、今夜の暦さえわからない。そろそろ風に乗って絢爛豪華な宮殿に帰ろうと思うんだけど、あそこは高いところにあって、寒くて嫌だなあ。自分が踊れば月影も踊る、こんな楽しみは人間界でしかできないよね。月の明かりは楼閣をめぐり、窓から部屋の中まで侵入してくるので、私は眠れない。お月さんよ、あんたに恨み言を言うつもりはないけど、どうして離れ離れになって淋しい時に限って満月なの?月が晴れたり曇ったり、満ちたり欠けたりするように、人には喜びや悲しみ、出会いや別れがある。こういうことは昔から、思い通りにならないよね。ただ願わくは、遠く離れているあなた、ずっとずっと元気で、そして地球のどこにいてもこの美しい月をともにに眺めることができますように」
もともとは遠く離れた弟を思う気持ちだったようですが、私にとっては、新型コロナの渡航規制のため会えなくなってしまった私の妻への思いでした。
私はシンガポールに住んでいて、妻は東京にいます。シンガポールも日本もともに渡航規制・入国規制をしていて、それまでのように、自由な行き来ができなくなってしまいました。夫婦の会話はリモートで、WhatsAppを使ってやっています。ソーシャル・ディスタンスを3260マイルくらい取っているリモート夫婦なのです。
月というのは、物理的な存在物の中で、地球上で遠く離れた私たちがリアルタイムに共有できる最も身近な存在です。太陽や星は遠く離れ過ぎていますが、月はリアルな物体として認識できますね。
考えてみれば、「但願人長久」と言うタイトル、新型コロナの時代にはまさにぴったりのメッセージですね。「ただ願う、みんないつまでも健康で、元気で」と言う意味ですが、物理的に会うことができなかったり、感染のリスクがあちこちにある状態の中で、一番大切なのは、病気にかからないで、健康を維持すること。命さえあれば、何とかなる。
たまたま昨日の満月がきっかけでこの歌を思い出しましたが、皆様の健康を心よりお祈り申し上げております。次の満月も、その次も、ずーっと次の満月も、一緒に見られるように。
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