七十歳まで続けようと思っていた大学への出講を、考えるところがあって、今年度いっぱいで終わりにすることにしました。
非常勤講師で毎週一コマという形ではいちばん長い法政大学での講義は、数えてみるとちょうど一回り十二年になりました。
最初の年十八歳だった若者が、もう三十歳になっているという長さです。
一〇七名から始まり最多の年には七七〇名に達し、学生たちの反応にやりがいや面白さを感じると同時に、膨大なレポートの採点にはかなりまいるなという感じでした。
今年度後期は、なんとか五五〇名ほどまでに減りましたが、それでもレポートが多くて、年末最後の最後まで読み切れず、年を越してしまうことになりそうです。
しかし大変だなと思う一方、下のような感想を読むと(すべて社会学部の一年生)、「やはり教えてよかった。このやりがいと大変さのアンビバレンツな感じも、今年度で終りなんだなあ」という感慨があります。
これ以外にもとてもたくさんの学生が「ありがとうございました」「さみしいです」という言葉を書いてくれたのは、こちらも本当にありがたく、そしてさみしくもあります。
しかし、惜しまれているうちに去るのがいいのかもしれません。
年が明けて最初の授業一回ですべて終了です。実際に終わってしまったあとで、多分もっと深い感慨が湧いてくるのでしょう。
何かが終わり、何かが始まる、そしてそれぞれに人間・凡夫らしい感慨が伴う。そのすべてが無常の時のなかの自然なことなのだな、と思います。
前期の授業を受けて、私たちは他のすべてのものとつながっていて一つである、ということを学び、私はずいぶんと生きやすくなり、心のつかえもとれたような気がしていましたが、具体的に何をしたらよいのかわからなく、もどかしく思った時期もありました。
しかし、後期のこれまでの講義を受けて、これから自分が何をすべきなのか、方向性が見えてきた気がします。私にできる道筋を示してくれたこの講義は本当に有意義なものであったし、先生には本当に感謝しています。来年度、ぜひとも後輩たちにも先生の講義を薦めたいと思っていましたが、今年度で退職なさると知り、寂しく思っています。
私はまだまだ未熟で、煩悩から抜け出して覚りの境地には程遠く、長い時間がかかると思いますが、少しでも覚りに近づけるよう、努力してきたいと思います。
そして、いつの日かまた先生にお目にかかることができればと思っています。
一年間、お世話になりました。本当にありがとうございました。
中学3年の合唱コンクールで他クラスが歌った曲で広く感銘を受けたものがある。「cosmos」という曲である。星空の下で、私たちは皆宇宙の一部であり、皆一つなのだと語る、といった歌詞であった。一方、自分のクラスが歌った曲は国を追われた流浪の民が安住の地を求めさすらう内容であった。これこそ、仏教そしてこの唯識の煩悩から覚りの図式なのではないのだろうか。煩悩に苦しみ、さまよう中で自己と宇宙との一体感に気づき、救われる。この体験がこの唯識の理解の手助けにつながったのではないだろうか。5年ほど前の出来事であるが、このレポート作成にあたり、授業以来あらためて唯識について整理し直して思い出した。そして当時の感動が脳裏によみがえった。苦しみの先にある宇宙との一体感という光がこんなにもすばらしいものなのだと。こんなにも身近なところに宇宙との一体感に気づくチャンスがあったのに、なぜ今まで気づかなかったのだろう。春先から前期・後期を通じて先生から教わってきたが、このようなすばらしいことに気づかせていただいた先生には感謝の言葉も見つからない。そんな先生が今期で法政大学から去ってしまうのはたいへん寂しいことだが、先生にはぜひともこの世界観を新たな地でも広められることを切に願うばかりである。また私自身も唯識の歩みを実践していきたいと思った。
私は前期も後期もこの授業を受けました。初めの頃、先生はこの授業を真面目に受ければ、絶対に変わるとおっしゃっていましたが、やはり最初は私も半信半疑でこの授業を受けていました。しかし、一年間この授業を受けて、私はすごく変われた気がします。周りから見たら本当に変わったかなんてわからないかも知れませんが、自分の考え方は確実に前向きに変わっています。全てのものは宇宙レベルでみなつながっていて、私もそのつながりの中で生まれました。それを考えると、自分とつながっているすべてのものへの感謝の気持ちと、今、自分がここに存在している意味を見出せる気がします。今まで私も、自分が幸せで充実していればいいやという自己中心的な考え持っていました。でもこの授業で、自分という存在と改めて向い合い、そのような考え方がどれだけ恥ずかしいものだったか気づくことができました。唯識という考えを学んで、生きることが今よりもっと楽しみになりました。先生の授業を一年間受けることができて本当に良かったです。『「日本再生」の指針』も買ったので、ぜひ読みたいと思います。一年間ありがとうございました。この授業で学んだことを大事にしてこれからもがんばっていきたいです。
「現代社会と宗教」の講義、前後期の二冊のテキストを通して、私の考えは、入学したときとは大きく変わったものになりました。入学したころ、私たち人間は、親から先祖、太陽、食べ物、水、空気など私ではない他のものとのつながりの中で生きていて、自分一人で生きることはできないという考えなど微塵もなくて、「俺はもう大人なんだから誰の世話にもならない。自分一人で生きていける」という風に考えていました。しかしその考えは、「現代社会と宗教」という講義によって大きく変わりました。
「世界は、一つであり、全てがつながっている」、こういう風な考え方が世界中に広まっていけば、戦争や犯罪などは全ておかしいものだと考えてなくなるのではないのかと、私は本気で思います。
つながりというのは、あるのが当たり前すぎて、その存在になかなか気づくことができないものだと思います。私は、この講義、二冊の本によってその存在に気づくことができ、考えを変えることができました。
これからの人生は「一つから世界を見る」という見方で生きていきたいと感じました。
なお、大学での授業は今年度ですべて終わりですが、このネット授業+αは続けますので、よろしければ続けてお読みいただけると幸いです。
では、読者のみなさん、よいお年を。