『からだは星からできている』

2013年02月26日 | コスモロジー

 最近、まだ読んでなかった佐治晴夫先生の『からだは星からできている』(春秋社、2007年)を読みました。

 これまでも佐治先生の著作からはコスモス・セラピーのヒントや素材をたくさんいただいてきましたが、この本も先生の科学者としての豊富な知識と感性豊かなロマンチストの面とが融合された、とても楽しく読めて深い示唆を与えられるものでした。

 「からだは星からできている」とは、ロマンティシズムと科学の融合をとてもよく表現したなんと素敵なタイトルでしょう。そして、そのタイトルの素敵さを裏切らない内容です。

 中途半端な紹介で読者の読む楽しみを奪ってしまうのは野暮なので、「コスモス・セラピーで学んだことを知識的にも感性的にも深めたい方にはオススメです」というご推薦だけにとどめておきたいと思います。

 ただ、今回もコスモス・セラピーのアプローチに現代科学的な確かな根拠があることを一流の科学者に改めて保証していただいたという感じがあるのは、以下の三つの点です。

 

 「この章(注:第二章「宇宙研究からわかった三つのこと」)では、宇宙の研究からわかったこと、三つについてお話しします。
 まず、第一番目は、壮大な物質循環としての星と生命、言い換えれば、すべての物質が循環していて、「すべては、ひとつのものから始まった」ということ。その“たまゆら”のひとときとして、たまたま、生まれたのが人間であり、今、あるような「かたち」として存在している、ということが、証明可能な科学的事実としてわかったということです。(36頁)

 次は、宇宙研究からわかった、第二番目のことについてのお話です。
 第一番目が、「すべては、ひとつのものから始まった」ということでした。そうであれば、すべては、ひとつのものから、枝別れして生じてきたということですから、「すべては互いに関わりあっている」ということが言えるでしょう。これが、宇宙研究からわかった第二番目のことです。(54頁)

 それでは、宇宙研究からわかった第三番目のこととは、なんでしょうか。
 それは、「ものごとはすべて、相反するものがバランスをとりながら存在している」、つまり「対極のバランス」から成り立っているということです。言い替えれば、「助け合う関係と向き合う関係のバランスから成り立っている」ということです。引力と反発力の関係、と言ってもいいでしょう。世の中は、相反する性質の均衡の上に成立しているということですね。(62-3頁)」

 現代科学が「証明可能な科学的事実」として――つまり宗教的教義としてではなく――「すべてはひとつ」ということと、「すべては互いに関わりあっている」ことを、明らかにしているというのは、改めて大変なことだと思います。


 三番目については、筆者の学びがまだ十分ではなかったので、これまであまりご紹介してきませんでしたが、今回の本で深く「なるほど」とうなずきました。

 特に感銘を受けたのは、以下のところでした。

 「いくつかの電子が集まって分子ができるのも、星が丸くなるのも、すべて、相反する性質の均衡によってもたらされています。雷が鳴るのにも理由があります。宇宙からは、いろいろな粒子が飛んできて、それらが、地球の周りにある空気に衝突して、空気の中の窒素分子や酸素分子をイオン化します。
 つまり、プラス電気を帯びた粒子とマイナス電気を帯びた粒子に分けてしまいます。この傾向が強くなると、同種類の電気同士の間に強い反発力が働いて、地球さえも壊しかねない状況になってしまいます。そこで、電気を中和するために起こる放電現象が雷です。」(64頁)

 雷のような私たちにとっては怖くて嫌なものに思える現象にも、ちゃんと地球にとっての存在理由があるのですね。

 中途半端な紹介をしないと言いながら、つい感銘を受けたエピソードを一つ紹介してしまいました。

 これ以上読者のみなさんの楽しみを奪うのはやめておくことにします。ぜひお読みになってみてください。

 それから、今後のコスモス・セラピーの講座に参加されるみなさん、講座の中あるいは後で、読後感想をシェアできると楽しいですね。



からだは星からできている
クリエーター情報なし
春秋社


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環境技術はすでに十分?

2013年02月24日 | 持続可能な社会

 「持続可能な国づくりを考える会」のブログにタイトルのとおりの記事を書きました。よろしければお読みください。

 著述業者としてやらざるをえない、いちばんめんどうなワーク・青色申告の準備中で、こちらの記事の更新がなかなかできません。

 もう一息なので、いましばらくお待ちください。

 こちらでも、いろいろ書きたいこと、お伝えしたいことがあります。

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藻とエネルギー自給の可能性?

2013年02月19日 | 持続可能な社会

 「持続可能な国づくりを考える会」のブログに記事を書きました。

 よかったら、ここから跳んで読んでみてください。

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終わりから始まりへ

2013年02月05日 | 持続可能な社会

 先ほど、ようやく3大学の最後の採点が終わり、これで大学の仕事はほぼ完了です。籍としては3月末まであるにはあり、あと若干だけ成績についての問い合わせや修正があったりしますが。

 他の大学での集中講座も入れて15年の、授業というかたちでの大学生との関わりはいちおう終わりです。

 率直な感想としては、意識的・無意識的にニヒリズムに浸されている若い世代に「いのちの意味」を伝えて元気になってもらうという意味では、かなりの成果が上がった、と感じています。

 しかし、自分が元気になった結果、自分たちとさらに次の世代のためによりより社会を創る人材に育ってもらうという意味では、期待したような成果は出ていないかな(それとも今は目に見えるかたちにはなっていなくても、これからやがて出てくるのかな)と思っています。

 そういう意味では、大満足ではなく完了感もありません。

 このまま、人材不足のままでは、日本と世界の未来が心配です(論理療法でいう不安という過剰な感情と心配という正常な感情の区別をしたうえでの意味で)。

 なので、これまでのアプローチはそれはそれで終わりとして、新しいより影響力・教育力のあるアプローチの始まりに向けて構想を練っています。

 自分と日本と世界の未来を真剣に心配しているみなさん、これからも一緒に考えていきましょう。



 
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『戦後史』『現代史』(正村公宏)について

2013年02月01日 | 持続可能な社会

 以下は、「持続可能な国づくりを考える会」のブログと共通の記事です。


 これまで私たちの会では、スウェーデンが、第二次大戦以前から準備し戦後から最近にかけて一貫して、福祉国家さらには緑の福祉国家へと歩んできた歴史を学びながら、それを推進した思想が単なる看板ではなく本気の社会民主主義であることを確認してきました。

 そして私個人としては、それと並行した日本の歴史を学びながら、日本にそれができなかった大きな理由の1つは――4象限理論からするとあくまで1つですが――戦前から戦後-今日に到るまで、日本では本格的な社会民主主義-社会民主主義政党が形成されなかったことではないか、と考えるようになりました。

 そして、それが日本の不幸だ、という気がしています。

 例えば、政権を得てから失うまでの民主党の政策・言動を観察していて、党全体として、ぶれることなく持続可能な国づくりに向かう方向付けとしての社会民主主義的な理念とビジョンが確立-共有されていないんだな、と感じてきました。

 社民党は今では「社会民主党」と名乗っていますが、発言を聞いていると、スウェーデンさらにはヨーロッパの社会民主主義政党とは視点・路線が違っていて、社会党以来のマルクス主義的な階級対立路線を引きずっているようです。

 (そういう状況に一石を投じるべく、前回の「政権交代」直後――タイミングが悪かったといえば悪かったのですが――私たちの会の「理念とビジョン」を民主党の衆参国会議員全員、社民党と自民党の「環境派」を名乗っている議員に送りました。結果は、民主党の議員2名から賛同の返事があっただけでした。)

 そういう日本の近代-戦後史の流れを確認できるのではないかと予想して、正村公宏氏の『戦後史(上)(下)』(ちくま文庫)、『現代史』(筑摩書房)を読んでみました。

 「なるほど、そういう流れだったんだな、やはりそうだったんだよなあ」と、きわめて本格的な専門家によって自分の考えの裏付けを得たという感じがしています。

 もちろん事実に裏付けられた詳細な論述があるのですが、以下の文章に要点が語られていると思われます。

 「『戦後』の初期のアメリカの日本占領政策の目標は日本の民主化と非軍事化であった。男女平等の普通選挙が制度化され、基本的人権の保障と主権在民が宣言された。新しい憲法は、自由民主主義(政治的民主主義)の憲法であると同時に社会民主主義(経済民主主義)の憲法でもあった。しかし『戦後』の日本の歴史の全体を通じて社会民主主義を強力に推進しようとする有力な政治勢力は形成されなかった。」(『現代史』472-3頁)

 どちらも力作であり大著ですが、本気で持続可能な国づくりを考えたい関係者のみなさんには、時間を使って努力して読むに値する参考文献だと思いますので、お勧めするとともに、ぜひ知識と理解を共有することができればと願っています。



現代史
クリエーター情報なし
筑摩書房



戦後史〈上〉 (ちくま文庫)
クリエーター情報なし
筑摩書房



戦後史〈下〉 (ちくま文庫)
クリエーター情報なし
筑摩書房


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