ここのところ毎日のように、「死にたい」と思っていた若い女性とその関係者あわせて9人をだまして殺したという神奈川県座間市の事件が報道されています。
事件の残虐さ、容疑者――報道によれば犯行を認めているとのことなので「犯人」と言っても差し支えないでしょうが――の極端なエゴイストぶり、異常な心理については言うまでもありません。
しかし、ここで改めて指摘したいのは、死にたいと思っている若者がそんなにも多いという事実、それに対して適切かつ十分な社会的対応が取られていないのではないかという疑問です。
それに関わって言えば、コスモロジーセラピー(旧称コスモス・セラピー、教育場面ではコスモロジー教育)は、一言で言えば、「死にたくなくなるセラピー」です。もっと言えば、「死にたい」から「生きます!」への大逆転セラピーです。
それは、以下のエピソードとコスモロジー教育の授業を受講した学生の感想(かつて紹介したものですが、現時点で意味があると思うので、改めて掲載します。了承は得てあります)を読んでいただけば、わかっていただけると思います。
「典型的なエピソードをあげると、初めて大学に毎週講義に行くようになった年、数回の授業が終わった後、やや幼い顔をした女子学生が、その顔に似合わない本気で深刻な表情で質問に来て、
「先生、私は、考えれば考えるほど死にたくなるんですが、友達に相談したら、『バカ、考えるから死にたくなるんだ。考えるのはやめろ』と言われました。やっぱり考えないほうがいいんでしょうか?」
と言うのです(その後、次第にわかってきたことですが、彼女のような死にたくなる若者、心を病んでいる若者が驚くほど多数いるのです。統計を見ると大人もです)。
そこで筆者は、こう答えました。
「戦後、ぼくたちやきみたちが学校で教わってきたことを元にして考えると、考えれば考えるほど死にたくなるんだけど、これから、考えれば考えるほど死にたくなくなる、それどころか生きたくなる考え方を伝えるから、あわてて死にたがらないで、がんばって授業に出ておいで」と。
するとその後、彼女はがんばって続けて授業に出てきて真剣に聞いている様子で、回を重ねるにつれて目が輝いてくる様子なので、そっとして深追いはしないで前期末まで待ってから、
「どう、まだ死にたい?」と聞きました。
すると、彼女はニコリと微笑んで、
「だいぶ死にたくなくなりました」と答えてくれたのです。
そして、さらに学年末にはすっかり元気になっていきました。」(拙著『コスモロジーの心理学』(青土社、「まえがき」より)。
以下の感想は大学2年の女子学生のものです。
〔授業の要約部分省略〕
先生が授業でおっしゃっていた、「人間は水素と炭素と酸素とちっ素と少しの何か」でできていると聴いたときは、正直言って、「人間を原子つまりモノのように言っているなんて……」と否定的な気持ちになってしまいましたが、私たちが生きている世界、また宇宙も原子からできていて、私たちは「星の子」と聴いたときは、胸から何かがこみ上げてきました。
宇宙カレンダーを見たときは、人間は、自然の力でできたのだなと思い、いのちのでかさを感じさせられました。
仏教も、いのちの大切さを教えてくれるけど、私は正直言って、現代科学の説明をして下さった先生の授業のほうが現実的で、よりいのちの大切さを学ぶことができました。
ニヒリズムの塊であった私を先生はハンマーで砕いてくれました。現代科学は、仏教では説明しきれない、いのちの大切さを教えられる気がしました。
だから、先生は仏教心理論なのに現代科学の話をしたのではないかと私は思いました。
また、私は過去または今でもたまに自殺したいと思ってしまう時があります。それは、高校の時少しいじめられたことや、所詮、人間は、エゴイズムでしかない。そういう考えからです。
でも、私が今、こうして元気に生きていられるのは、お母さん、お父さん、ご先祖様、そして、宇宙の歴史なのです。私のつらさなんか、米粒くらいのことでしょう。ご先祖様たちが今までつらいこともあった中で、子孫に継いでいた中の1人が私なのです。良く言えば、私は宇宙の歴史の中の代表者なのです。これは、今生きている人間全員に言えることです。
こんな大切ないのちを捨てるわけにはいきません。私は生きます!……
ありがとうございました。私は変わります。
こうした若い世代の気持ちが「死にたい」から「生きます!」に変わることを教育現場で体験してきましたので、単に個人の自己宣伝ということではなく、日本社会全体のために、ぜひコスモロジーセラピー=コスモロジー教育が広がることを切望しています。
関心を持っていただけた方、ぜひコスモロジーセラピーの講座にお出かけください。そして、体験して納得できたら、拡げることにご協力ください(今年は、あと2回、11月18日、12月16日、東京神田の会場で。問合せは samgraha@smgrh.gr.jp へ)。