引っ越しが終わった
金沢での30年もの長い歴史に終止符が打たれたような気持ちだった
カーテンが取り払われた窓から
オレンジ色の夕陽が降り
部屋は一面の光に満ちていた
床を磨きながら、なんだか分からない涙が
ぽつりぽつり
子供と過ごした一つ一つの思い出が
バラバラに分解され破壊され
粉々に砕けて、光に飲み込まれていくようだった
子供たちがこんなにも大きくなって
それを見届けるかのように
ここを去っていく
大変だった子育ての一コマ一コマが
仕事に追われた日々が走馬灯のように過ぎていく
色々なことが終わり
ここを去っていく
なんとも寂しい気持ちと切なさが
止まらなくなってしまった
どうか幸せでいてほしい
人生を謳歌してほしい
まるで自分が天に召されていくかのような
気持ちになっていた
この世を去っていくとき
きっとこんな気持ちになるのだろう
子供たちに出会い、見届けて
そして去っていく
大きな仕事が終わった
金沢はイチョウの木が黄色く輝いていて
美しかった
本当にありがとう