イギリス/ストックポート日報 《England/ Daily Stockport》

イギリス北西部の歴史ある街、ストックポート Stockportから(ほぼ)日替わりでお送りする、イギリス生活のあれこれ。

中国人が調理した、イギリス人向きにアレンジされたイギリスで食べる中華料理に、イギリス人の食事習慣を見る

2020年06月19日 09時00分00秒 | 英国の食べ物、飲み物
私のうちでは家族の誕生日に必ず外食することになっています。

.....と言ってもあいかわらずのロックダウン、レストランもパブも営業停止、外食は無理なので先日の夫の誕生日には、中華料理をデリバリーしてもらいました。



先月の息子の誕生日はインド料理、今度は中華をウェッブサイトで注文しました。
やはりカードでオンライン決済、現金のやり取りは一切なしです。
配達員はドア・ベルをならし、ビニール袋に入った注文品を玄関ポーチの上において道路にとめた自分の車まで戻ります。

配達先の家の人が袋を手に取るのを見届けてから立ち去る、ロックダウン中の配達儀式がまた厳粛にとりおこなわれました。


さて、イギリスで中華料理を食べる時、私が必ず注文するもの、それはクリスピー・チャウメイン chrispy chow mein

(下の写真の右側です)


イギリスに住む、香港から移民した中国人にはおなじみらしい、硬いパリパリした焼きそば(=チャウメイン 炒麵)です。


イギリスに住む中国人移民のほとんどは香港から来た広東系の人たちです。
だから、イギリスで人気の、中国人が経営するチャイニーズ・レストランやチャイニーズ・テイカウェイ(持ち帰り専門店)で料理されるのはほとんどが「広東料理」なはずなのですが....

イギリスでも、中国人が移民した多くの国と同様、中国系移民が現地人向けに考案した「ご当地風広東料理」が人気です。
多くのイギリス人には不評らしい(中国人がそう言っています)香港式の「硬い焼きそば」は、メニューに載ってないことが多いようです。

イギリス人はとにかくべちょべちょねちょねちょした食感を好む人が多いらしく、「チャウメイン (炒麵)」といえば、蒸した中華そばにとろみをつけた甘辛いソースがすでに絡めてある状態で出てきた料理のことをさします。

それでも、クリスピーをたのめばたいてい特別に出してくれます。
店の経営者や従業員、母国の味を楽しみたい香港系中国人の客向けに用意してあるのでしょうか。

今回たのんだこの店では、サイド・ディッシュとして、「クリスピー・チャウメイン」が単品で販売されていました!



やった、念願の硬い焼きそばに好みのソース(あん)をかけて食べられる!
.....というわけで、八宝菜のように炒めた具材をとろみのついたあんかけソースでまとめたチャプ・スイ chop suey (雜碎) を単品でたのみました。
(下の写真の右側です)

息子は、チャーシュー・チャウメイン char siu chow mein(叉燒炒麵)を注文しました。
(下の写真の左側、赤っぽい色のソースです)



チャウメインを注文すると、蒸した麺がソースと混ぜてあるのが普通なのですが、今回はチャーシュー・チャウメイン も麺とソースが別々の容器に入って届けられました。
クリスピー・チャウメインを単品で注文したために、2種類のソースを2人で分け合って食べるつもりだと思われて気を利かせてくれたようです。

テイカウェイやデリバリーで注文したクリスピー・チャウメインが ソースといっしょの容器に入ってくることはまずありません。
べちょべちょになってしまい、せっかくのパリパリ麺を注文した意味がなくなってしまいますから。



クリスピー・チャウメインにスペシャル・チャプスイをかけて、日本人好みの「かた焼きそば」の出来上がり。


おいしかったです。

ちなみに、チャプスイというのは、アメリカ合衆国でアメリカ人向けに作られ始めた「アメリカ式中華料理」だそうです。
イギリスだけではなく、カナダ、オーストラリアなど中国人移民が定住している他の英語圏の国々にも広まって人気です。


息子のチャーシュー・チャウメイン。



ところで、話は少し変わります。
私が麺にかけて食べたチャプスイやほかの料理(ゆるめのソース風が人気です)はご飯といっしょに食べられるのが普通です。

そして、イギリス人はご飯類をゆるい料理なしには絶対に口にしないということをご存知でしょうか。
日本人のようにご飯とおかずになる料理を箸で少しずつ口に運びながらいっしょに食べる、ということも絶対にできません。

以下、イギリス人の食事習慣はあくまで一般論です。

中華料理屋でごはん茶碗に盛られて出されたご飯は必ずゆるい料理の入った大皿にポイ、とあけられビチョビチョに浸されて食べられます。

その逆に、茶碗のままのご飯にゆるい料理をかけて食べることは絶対にありません。
日本料理でも同様、煮魚やお酢のものの小皿や小鉢にポイ、とご飯をあけて、お米の一粒一粒がしっとりとした汁で潤うまでしっかりと攪拌してから食べます。

日本人にはとても見苦しい光景です。

ごはん茶碗はとりわける(等分な量を計って食卓に供する)ためだけに使われるものと思われているようです。
食器を手に持って食べる習慣が全くないのですから。

もちろん「中国人や日本人はそういうことはしません」と説明されたら、客として呼ばれた人はたいていやめますが、じゃあどうやったら味のないご飯を食べられるのか説明しても「口の中で混ぜる」のが実行できない人が多いのです。

客として呼ばれた人は呼ばれた家のマナーに反することはしないようにする心遣いがあるのですが、例えばうちの夫など、自宅で私が作った日本料理を食べる時、最初の間しばらくはご飯を浸して食べるための汁気のあるおかずを必ず要求しました。

焼き魚などを出すと まず魚だけを食べきったあと、ごはんにはたっぷりのおしょうゆをかけて、あるいはみそ汁にご飯を入れて食べる習慣をやめませんでした。
子供たちが同じことをやろうとするのを私がやめさせようと躍起になり始めるまでは....
「自分のうちでは食事ぐらい好きなように楽しませてほしい」と強く要求していた夫には日本の食事マナーを押し付けるのはあきらめていたのです。
が、さすがの夫も「子供が日本人の母親がこだわる日本式テーブルマナーを無視するのを許してはいけない」と思い始めてくれたようです。

今では鮭の塩焼きと白いご飯を汁に浸さないでもそのままおいしそうに食べてくれるようになりました。
いまだに口の中で混ぜる食べ方は苦手なようで、ほぐした身をご飯にまぶして食べていますが。

まあ、今でも中華料理を食べる時は「ご飯のべちょべちょ食べ」を容認しています。
夫も子供たちも汁に入れたほうがご飯はおいしいと思っているらしいので。
中国人もやらないそうです。(留学中に知り合った台湾人の学生も「気持ち悪い」と言っていました)

この日は、エッグ・フーヨン egg foo young (芙蓉蛋=かに玉)と、イギリス式チップス Chips (=ポテトフライ)に.....


中国式の甘ーいカレーソースをたっぷりかけてぐちゃぐちゃ崩して食べる、テイカウェイ/デリバリーならではのイギリス式中華料理を夫は思いっきり楽しみました。

(日本人の私はやりません、できません。中国人もやりませんよね?)













チャウメイン chow mein (炒麵)
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2 コメント

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夫婦喧嘩は存在しない (浅井洋)
2020-06-19 16:29:18
江里様

 口の中で 混ぜる と いう言い方 良いですね

 気がつかなかったです

 日本の文化は お掃除と片付けの文化で

 こぼす 濡らす 散らすのを 嫌がるので

  食事の時も

 お茶碗で 受けて食べないと こぼすので

 自然と お米とまぜて(鮨のミニと 言うか 小さく緩い おにぎりの上に 総菜を乗っけて)

 食べる 「こぼさない」文化だと思ってました
返信する
浅井さんへ (江里)
2020-06-22 07:26:37
以前にもこの話を書いた時、読者の方に、日本人が口の中で味を混ぜることを「口内調味」ということをコメントして教えてくださいました。比較文化的な研究対象の事象なようです。
そう言えば、中国人はテーブルの上を散らかして食べるらしいですね。「思いっきりこぼす文化」です。食事を楽しんでいる表現で、マナー違反ではないそうです。若い人は嫌がるようですが。
返信する

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