古文書を読もう!「水前寺古文書の会」は熊本新老人の会のサークルとして開設、『東海道中膝栗毛』など版本を読んでいます。

これから古文書に挑戦したい方のための読み合わせ会です。また独学希望の方にはメール会員制度もあります。初心者向け教室です。

迦南句を読む 5    横井迦南句集より

2017-04-21 21:20:55 | 横井迦南

写生自在3

雛つくり客に吃りつ手を休め  迦 南

 

句会でこういう句を見たら多分見逃してしまうでしょうね。短時間で選句しな

ればならない句会では地味な句は損をする場合いが多いのです。

しかし、炯眼の士は必ずいるもので、この句はそういう人に拾われると思い

ます。では、その炯眼の士の弁を聞いてみましょう。

まず、「雛つくり」というのは雛を作る作業の事ではなく、雛作り職人のことで

す。その職人は店を持っていて雛祭りの比であるから店内には大小色々の

雛人形が目立つところに飾り付けてあります。それらは皆店主である職人

の作ったものです。折しも一人の客が入って来て雛を見ながら店主に向

かって何か言ったのですね。店主は作業を続けながら受け答えするのです

が、どうもこの職人には吃音症があるらしく会話がスムーズに行きません

が、客はこの雛を買いたいとでも言ったのでしょう。店主は手を休めてその

雛の説明を始めた。というのが一つの解です。

しかしこの解は「客に吃りつ」という措辞の意味するところを低く見ている、

もっと言えば見逃しているのではないか。

こは客と職人との間に何か𡸴悪な事態が発生して店内の空気が一変した

た場面と見るのが正しい解釈ではないか。客から自尊心を傷つけられるよ

な事を言われたために、例えば人形に瑕があるというような、職人は烈し

興奮してひどく吃りながら抗議したという場面です。

客の方はなにをそんなに職人が興奮するのか、ちょっと面食らっているとい

う状況ですね。それがどのように決着したかまでは判りません。

こう解釈をすればこの句は職人の内面描写をしているわけで、さらに職人

の子供の頃にまで想いが遡り吃音症があるために親も子の将来に思い悩

み普通の職業は諦めて人形師の道に入ったというような経歴にまで想像が

及ぶのです。

ちょっと見にはなんでもない句のようでありながら、よくよく吟味すると上記

のような複雑な感情を蔵している小説的構造を持った人事俳句ということが

できます。

 


鶴亀句会 4月例会  2017

2017-04-21 15:07:26 | 鶴亀句会

会日時   2017-4-21  10時

句会場        パレア9F 鶴屋東館

出席人数   8人 

指導者    山澄陽子先生(ホトトギス同人)

出句要領  6句投句 6句選   兼 題  陽炎

世話人    近田綾子 096-352-6664 出席希望の方は左記へ。

次 会    5月19日(金)10時パレア9F 兼 題 麦秋

今日は案月子さんが欠席、世話人の綾子さんが携帯で連絡を取られてい

ましたが、どうも日にちを忘れておられたようです。老人の会ならではのこと

ですね。

それから今日はお二人の入会がありました。興さんと小夜子さん、いれも

性で、純子さんのお誘いによるものです。人数が増えるのは良いことで会

気がれてきました。

 

山澄陽子選

海峡を行き交ふ船の陽炎ひて     小夜子

快速の止まらぬ駅の夕桜         〃

陽炎や異人館屋根踊らせて        〃

かげろふや大学の道赤煉瓦       興

早春の山ふところのレストラン      〃

二人して指さしてゐる桜餅       武 敬

軽き衣を肩に引つ掛け春の暮      〃

陽炎へトロッコ列車走り行く       〃

震災の傷癒えぬ城楠若葉       礁 舎

鴨引いて残りし湖の広さかな      〃

木瓜一輪朱の色とどめ庭に咲く   綾 子

雨あがり桜遅れて満開に        〃

桜散りフロントガラス花模様     純 子

滑走路かげろふ踏みて翼発つ     〃

ぴょこぴょこと若草跳ねるひよこかな 茂 子

ベコニアの八重の白きがわが自慢   〃

 

先生の句

沈丁花ほろほろ零れ雨催

枝垂れてはしだれては花風を呼ぶ

陽炎てこの道どこか懐かしく

移り行く刻の早さに花の散る

その先は曖昧模糊と花の雲

魂のわが身離るる花の下