べんりや日記

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栗石地業

2007-07-04 20:20:49 | 悠久町M邸 木組みの震災復興住宅


半日天気がもってくれたおかげで、材木の運搬等の外部作業ができました。
入梅しているので、わずかな晴れ間が貴重です。

悠久町のM邸でも基礎工事がはじまっています。
表土を掘削して、直径12センチくらいの割栗石(わりぐりいし)を全面に敷き詰めます。
一個一個地盤に突き刺すように立てていく作業が延々続くのです。
この上に捨てコンクリートを打ち、鉄筋を並べてベタ基礎にします。
左官屋さんも慣れてきたようで、安心してまかせておけるようになりました。


地盤改良も何もしないのですが、長岡よりも信濃川の下流側の軟弱地盤で行っている方法なので、どんな場所でも施工が可能です。
バランスの良い家の形に設計しているので、不等沈下も起しずらくなります。
この上の建物は、基礎に頼らない上屋だけでももつ木組みなのですが、昔からこの方法なので捨てきれません。
本当は、伝統的な石の上に柱を立てるやり方もしてみたいところです・・


最近は、砕石を重機で敷き詰めて終わりみたいな基礎が未だ行われているようですが、そういうのを見る度に、

  「地震がきたら、砂利が崩れるぞ」

と、注意したい気分です。
表層改良している基礎で、その上に単に布基礎だったりして、

  「地震が来たら割れるぞ」

と、お客さんに言いたいのですが仕方が無い。
地震を経験してもそのありさまです。
だいたい、地盤調査をすれば殆どが、改良が必要な結果が出るのは目に見えています。
基礎に自信のない会社ほど、地盤改良をしたがる・・
上屋に自信のない会社ほど、基礎に頼りたがる・・

地震を経験したのなら、それに対応する術も考えられるはずなのに・・
いったい、何を見てきたのやら。




6月20日より、建築基準法令が改正され、違法行為ができない体制に移行したようです。
行政側もまだ対応に慣れていないようですが、伝統構法の家づくりにとってはやりずらくなってきました。

伝統的な構造はまさに経験上の上に成り立っていますが、数値的に現すのが難しく、科学がまだそこまで至っていないのが現状です。
何百年も建っている古民家は何度も大地震を経験していますが、現在の耐震診断や構造計算では、

「倒壊に至る」

と診断されます。でも、実際には大丈夫なのです。
多くの計算や実験で解明しようとしているようですが、学派や企業間の争いがあり、なかなか進まない。

         総持ち(そうもち)理論

は、大工の伝統的な考え方ですが、家の木組み全体で耐震に備えるというものです。(最近の技術の無い大工が軽々しく用いるものではない。建ててしまえば全体で効くみたいないい加減なものではない!)

昔ながらの技法、設計法があり、部材や継ぎ手、仕口に至るまで経験や試行錯誤が延々繰り返されてきた集大成なのです。

そこにメスを入れようというところなのですが、法改正によって全てが否定されようとしている・・
たとえば、小屋裏の火打ちです。
あんなもの、地震の時には応力が集中して桁が折れてしまう。
しかも、何本入れていいのかのマニュアルも無い。
ただ隅にいてれいれば基準法としては通るのでしょうが、実際には無数に入れない限りは小屋裏の水平合成が確保できないでしょう。
四隅、中心部等の少なくとも9箇所(全20箇所)は最低必要だと思いますが、実際には少ないでしょう。
その最低基準も定めていないのに、ただ入れればいいというのも納得いきません。

伝統構法の場合は、梁、桁を全て折り置きにして、渡りあごによって接合し、柱の重ホゾによって貫いて固定します。さらに、桁方向に背骨とでも言うべき「中引き(なかびき)」をやはり渡りあごによって接合、大栓を打って固定します。
そして、小屋筋交いの替わりに妻天秤を組み、小屋組み全体で水平合成を確保します。
火打ちなど、要らないのですが、その計算方法がまだ確立されていない。
立体として対応しているのですが、計算するとたいへんなのでしょう。
コンピューターでマトリクスシュミレーションみたいのでしないと結果は出ないのかもしれません。

そういう、個の数値で表す西洋的な方法ではなく、全体で表す東洋的な方法が必要だと思います。
実際、水平力に対する耐震計算はできるのでしょうが、下からの突き上げによる計算は、現在の建築基準法では定められていません。
伝統構法には、経験上、その下からの突き上げに対しても有効な組み方が仕込まれています。
それは、中越地震を経験して、実感できました。

それを、どう、数値に表していくか、今後の課題となっていくでしょう。
また、今後起るであろう関東、東海地震では、突き上げが予想されています。
現況の耐震計算では、突き上げまで考慮されていません。

基礎に関しても、支持地盤に杭等が到達していた方が強いという見解が一般的ですが、中越地震を経験したわたしから見ると、そうとは思えません。
むしろ、支持地盤に到達するのは避けたほうが良いという結論です。
これは、鉄骨屋さんも同じことを言っていました。
公共工事ほど、支持地盤に頼っているため、むしろ被害が大きいと・・

最近の、免震構造に代表されるように、揺れる地盤の力をどこかで縁を切ってやり、上の小屋組みでもたせたほうが合理的です。
支持地盤の突き上げを、もろに建物に受けてしまうと、それに対応する強度がないと、建物がもたないのです。
一般の住宅に支持地盤のエネルギーが伝わると多大な被害が出てきます。

田んぼを埋め立てたようなぶよぶよな場所のほうが、地震のエネルギーを吸収してくれます。
その上にバランスの良い建物をたてたほうが、よっぽど被害が少ない。
多少の地盤沈下が起っても、修正できるような基礎との緊結方法をとったほうが、後々楽だと思います。


そんなことを考えながら、割栗石を並べる左官屋さんを見ているのですが・・
コメント
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