この記事のポイント
雪国での窯業系サイディングを採用する場合の注意点
1.凍害について
2.塗装は10年を目途に塗り替えする
3.コーキングの寿命は5年
4.外壁自体が変形する
5.手遅れの場合は張替え又は外張り
①張替え工法
②外張り工法
③部分的なカバーリング+塗装
1.凍害について |
窯業系サイディングは表面の塗膜が剝がれてくると、そこから雨水が侵入し、内部の基材を侵食してしまいます。
特に、雪国では「凍害」といって、外壁の基材に到達した水分が凍結することで膨張し、氷が内部から破裂を起こして窯業系サイディングの基材を破壊していきます。
北側の外壁面は夏場にコケ等が発生しやすく、破損した外壁に根を張って破損部に更に侵食していくのです。
凍害が進むと、塗膜の裏側の基材が破損していきます
特にコーナー部は損傷が激しくなります
北側の場合、基材の破損部にコケが付着して根を張り、さらに破損していきます
2.塗装の間隔 |
雪国で窯業系サイディングを採用する場合は塗装の塗膜の寿命が尽きる前に、塗装工事を行う事が必要です。
チェックの方法としては、外壁を触ってみて、手のひらに白い粉(白華)が付いたら、そろそろ寿命だと思ってください。
塗装のグレードにもよりますが、おおよそ10年~15年を目途に塗装工事を行いたいところです。
3.コーキングの寿命は5年 |
塗装の塗膜よりも寿命が短いのはコーキングです。
コーキングは外壁の継ぎ目等に施工する防水材ですが、コーキングのグレードによって劣化の激しい南面、西面では寿命は2~3年です。
コーキングが固まってガビガビに乾燥し、ひび割れを起こしてしまいます。
また、コーキングは金属面との接着は相性が良いのですが、窯業系サイディングとの接着が弱く、経年劣化と共に外壁とコーキングの間が剥がれてヒビが入ってきます。
施工にもよりますが、おおよそ5年でコーキングが剥がれてきてしまい、外壁の内側に雨水が徐々に侵入してきます。
塗装工事と同時にコーキングの打ち直しを行うことをお薦めします。
劣化したコーキングは形だけの存在になるので、撤去してコーキングの打ち直しを行います
4.外壁が変形する |
窯業系サイディングは木質系や繊維系の基材をセメント等で固め、防水塗料を塗布したものです。
厚みも昔は12㎜が主体でしたが、最近は防火性能を高めた14㎜の厚みのものが主流となってきました。
木の板と比べると、コンクリートのように頑丈に見えるのですが、意外に変形を起こします。
外壁の板が反ってくる事があり、釘やビスが下地から抜けて押すと外壁がぶかぶかして遊んでいる事もあります。
外壁の南面、西面等の陽の当たりが激しい場所で、こういった変形を起こしやすい事が経験上で分かっています。
こうなった場合、外壁の下地へビスの打ち増しを行う事をお薦めします。
5.手遅れの場合は張替え若しくは外張り |
塗膜によって外壁の基材の浸食が抑えられていれば、塗装を繰り返すことで外壁の寿命を延ばせますが、痛みが激しくなった場合は、塗装をしても2~3年で塗膜が剥がれてしまうため、手遅れの状態だと判断します。
この場合、別の外壁材への張り替え、外張りをお薦めします。
①張替え工事
外壁を張り替えるとなると、既存の外壁を撤去して、新たな外壁を張る事になります。
アスベスト調査
外壁の撤去を行う場合、気を付けなければならないのはアスベストが含有されているかどうかです。
2006年(平成18年)以降は建築材料へのアスベスト混入は全面禁止となったので心配ないのですが、それ以前の製品の場合、アスベストが微量に含まれている場合もあります。
設計図書等に外壁の仕様が記載されていて、製品が分かるのであれば、データベースを使用してアスベストが含有されているかどうかを調べることが出来ます。
資料が残されていない場合は、外壁のサンプルを採取して試験機関に送ってアスベストが含有されているかどうかを調べる必要があります。
アスベストの混入した廃材を処理する場合は、撤去時、運搬時、処分時に適切な密閉処理を行わなければならず、工事単価にはね返ってきます。
外壁下地
外壁を撤去した時に、下地も傷んでいるかどうかをチェックする必要があります。外壁を止めるための木材が打たれているので、その損傷がどの程度かという事です。
サイディングの痛みが激しいと、それなりに雨水が内部に侵入しているため、木材が侵食されていると、新たに釘やビスを打っても効かない場合が想定されるので、交換が必要になります。
大昔の建物の場合は、防水シートではなくフェルトが張ってる場合もありますし、フェルト自体も貼っていない場合もあります。
できれば、防水シートを取り換えて、遮熱性のある透湿防水シートを張れば外壁からの熱損失も抑えられます。
また、防水シートを張り替える際は、通気施工やサッシ廻りの防水処理ができるので、建物においても寿命を延ばす施工が可能となります。
省エネ工事+耐震工事
外壁の張替えと共に、壁断熱工事、サッシ断熱工事を行うと省エネ性能を高める事となり、各補助金の対象となります。
また、耐震面材を外部に打ち増しすることで、耐震工事も可能となり、これも各補助金の対象となります。
外壁張替え工事の際には、こういった省エネ工事、耐震工事も視野に入れた方が良いと思われます。
②外張り工法
既存の外壁を撤去しないで、その上に新たな外壁を張る工法です。
工事費用も張替え工事よりは安く抑えられるメリットがあります。
既存の外壁を打ち増ししておく
既存の外壁が変形したり、その下地が腐食して釘やビスが効かずにブカブカと遊びのある状態になっている場合があるため、ビスの打ち増し作業を行っておく必要があります。
下地木材を新たに打つ場合は、しっかりと固定したのを確認してから、新たな外壁材を打つことを心掛けて下さい。(外壁を打ってしまうと、その下地は修正が効かなくなります)
雨仕舞を良くしておく必要がある
外張り工法で気を付けなければならないのは、サッシ廻りや配管廻りなどの外壁の継ぎ目の部分から、外壁内部に雨水が侵入しないように施工に気を付けなければなりません。
雨水が外壁内部に侵入し、放っておくと外壁の下地木材が腐食し、シロアリの喰害を受ける場合があります。
サッシ廻りの雨仕舞い
③部分的なカバーリング+塗装工事
外壁の損傷がコーナー部分など限定されているのであれば、その部分のみを鉄板等でカバーして、補強をします。
それ以外の部分は塗装で済むので、全面的な張替えや外張り工法よりも安価になります。
今回のU邸の施工では、上記の②③の併用のハイブリット型の外装補修工事となりました。
部分部分で的確な施工を選択することで、全体の工事金額を抑える工夫もできるわけです。
既存の窓廻りの雨仕舞 MMRシステム
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