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6月10日は新聞休刊日

2013-06-10 05:46:17 | 社説を読む
今朝は新聞休刊日なので、昨日のコラムを紹介します。

朝日新聞
 「時間が足りない」と焦るくせに、「時間をもてあましちゃって」などと言う。思えば、しっくり過不足なく時間が流れることは、人にはまれなのかもしれない。時間を止めたい時があるかと思えば、お金を払ってでも早く過ぎてほしい時がある

▼後者の典型は待つ時間だろう。それにも様々なシーンがある。ラブレターの返事を待つのと、舌打ちしながら遅延電車を待つのは違う。通勤電車の場合、10分の遅れで4人に3人がイライラを感じるそうだ

▼シチズンホールディングスが、ビジネスに携わる20~50代の男女計400人に聞いた。総合病院では45分までに過半数が、役所なら15分までに7割が「イライラゾーン」に入るようだ

▼それでも10年前の調査に比べて気長になっているという。スマホが時間つぶしに役立っているのでは。そんな推測がある一方で、ネットの接続に10秒かかると5割以上がじれるというから皮肉めく

▼米の文豪フォークナーが「時計が止まるとき、時間はよみがえる」という意味のことを述べていた。考えてみれば、私たちは時計なしの時間を知らない。時を見た人はいないのに、時計に時を見せられて、いつも小走りに急ぎがちだ

▼おそらくは文豪と同じ含みで、「ちっこい機械が悠久の時間を支配すべきだろうか」と書いたのは絵本作家の故・佐野洋子さんだった。あすは時の記念日である。きょうはひとつ、ちっこい機械の文字盤を、しばし忘れてみるのもいい。できればスマホもOFFにして。


毎日新聞
 幼なじみの2人が偶然再会したのは英国のダートフォードという小さな町の駅だった。1人はロックンロールやブルースの「お宝レコード」を何枚も抱え、もう1人はそれを見て興奮した。1961年の話である

▲レコードの所有者はミック・ジャガー。たちまち意気投合したのはキース・リチャーズ。後にロックバンド「ローリング・ストーンズ」の中心となる2人だ

▲今年はストーンズがレコードデビューして50年になる。高齢者の活躍が目立つ昨今だが、メンバーの入れ替えはあったものの一度も解散せず、もうすぐ70歳になる2人が今も一線で演奏し続けているのは、やはり称賛に値する

▲キースの自伝「ライフ」(楓(かえで)書店)によれば、彼の父方の祖父母はともに英労働党の創設から関わり、社会の改革に生涯をささげたそうだ。自伝ではその孫が自分であることを「ありそうにない話」と照れつつ、ギターを手にする前はボーイスカウトで熱心に活動し、「グループを組む訓練にもなった」と語っている

▲同世代のビートルズに比べ「不良」の印象が強い彼らだが、長続きの秘訣(ひけつ)はこの辺にもありそうだ。一方のミックは新しもの好きで、94年、世界で初めてライブ映像のネット配信を試みた(当時はまだ細切れ映像だったが)のが彼らだったことも記憶しておいていい

▲きょう「6・9」は語呂合わせで「ロックの日」だそう。NHK・FMでは昼過ぎから約10時間、ストーンズの曲を流して半世紀を振り返るという。その「継続の力」を知れば、オールドファンのみならず、「サティスファクション」(満足!)と言いたくなるに違いない。 続きを読む  


日本経済新聞
 一番の中でもこの一番はちょっと特別である。運動会の定番「クシコス・ポスト」の慌ただしい響きに押されるように駆けた小学校の徒競走で、「一番足が速い」子はすでに英雄だった。ただ残念なことに、この国の一番は長く世界の一番と同じ舞台には立てていない。

▼男子100メートルでオリンピックの決勝を走ったのは、後にも先にも1932年のロサンゼルス大会6位の吉岡隆徳しかいない。これまで10秒を切った84人のうち82人がアフリカ系選手で、決勝は黒人ばかり、が昨今当たり前でもある。その「9秒クラブ」に日本の若者2人が名を連ねようかというのだ。見ていて力が入った。

▼大学生の山県亮太選手(20)と高校生の桐生祥秀選手(17)。日本選手権の結果はどちらも9秒台に届かなかったが、2人はこれから何度もこの国の一番を争うだろう。簡単ではないが、世界の一番を決めるスタートラインでボルト選手の横に並ぶ日が来るかもしれない。そんな景色への期待も、いまや夢物語とはいえない。

▼宗教学者の山折哲雄さんが、大舞台に臨む選手が支えにする言葉を吉岡のころと現代で比べている。昔が「母」「死ぬ覚悟」「神様」で今は「自分らしく」「楽しく」「笑顔で」。でも心の底にあるものがどれほど違うか、それは分からない。そう続く山折さんの話を、レース直前の2人の重い表情に思い出したりもした。


産経新聞
・ 落語の『やかん』は知ったかぶりのご隠居の噺(はなし)だ。八五郎から物の名前の由来を尋ねられ「茶碗(ちゃわん)はちゃわんとしているから茶碗だ」などと、珍妙な答えを連発する。「では、やかんは」と聞かれ「昔サムライが兜(かぶと)の代わりにかぶったからだ」と言う。

 ▼「戦場で敵の矢が当たってカーンと鳴る。矢がカーンでやかんとなった」。八五郎が「つる(取っ手)が邪魔になりませんか」と突っ込むと「あごにかけ忍(しのび)の緒(ひも)にする」と負けていない。注ぎ口は「戦(いくさ)で名乗り合う声を聞くための耳の代わり」だそうだ。

 ▼だから落語界で「やかん」とは、生半可な知識を振りまきたがる者のことを言う。それにしても、やかんの形から兜を思いつくとは、みごとな想像力である。ところが米国で最近、このやかんの格好が思わぬ「ナチス騒動」を招いたというニュースには驚いた。

 ▼ロサンゼルス郊外に大手百貨店が建てた看板広告である。やかんの写真がナチスのヒトラーに見えるとして投稿サイトに掲示され、「意図したの?」などと騒ぎになった。百貨店側は「決して意図的ではありません」と釈明したが、反響の大きさに看板を撤去したという。

 ▼今月3日の本紙に載った写真を見ると、似てなくもない。取っ手とふたのつまみの部分がヒトラーの髪とひげに、斜め上を向いた注ぎ口がナチス式に敬礼している手のようにも見える。むろん言われて見るからだが、兜と違いギョッとした人も多かったことだろう。

 ▼1945年にヒトラーが自殺して、もう70年近くがたつ。それでもやかんの看板ひとつからでも亡霊のようによみがえる。人々の心の中からナチスやヒトラーを追い払うことの難しさである。などと言えば「やかん」と叱られそうだが。

中日新聞
 あなたは恐竜を食べたことがありますか? 何を朝から寝ぼけているんだ、と言うなかれ

▼恐竜学の最前線を分かりやすく解説する『恐竜時代1』(岩波書店)の著者、北海道大学の小林快次(よしつぐ)准教授は一般向けの講演のたび、こう説明するという。「鳥は恐竜なんです…インコやジュウシマツを飼っている人は、恐竜を飼っていると自慢してもいいんですよ」

▼ここ二十年で、恐竜研究は飛躍的に進んだ。かつて恐竜と鳥との進化の歴史をつなぐのは、十九世紀半ばにドイツで見つかった「始祖鳥」だけだった。それが、一九九〇年代から中国で、羽毛や翼を持った恐竜の化石が、数え切れないほど発見されてきた

▼進化の大樹から見れば、爬虫(はちゅう)類という大きな枝から恐竜という枝が生じ、さらにそこから伸びて、現在へとつながっている枝が鳥類。大絶滅期を生き延びたのが、鳥類型の恐竜-ということになるらしい

▼小林さんが今、頭を悩ませているのは、鳥は肉食の恐竜から進化したのか、それとも植物食の恐竜かという問題だ。「食物連鎖の頂点に立つ肉食恐竜からならば、強者がさらに空に覇権を求めたことになる。植物食恐竜からであれば、弱者が空に追いやられたということになります」

▼鳥のご先祖さまはどんな思いで、空に羽ばたいたのか。焼き恐竜(つまり焼き鳥)でも味わいつつ、想像してみますか。

※ おもしろい!

 文章も上手いが、内容も素晴らしい。 

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