今日は新聞休刊日なので、昨日のコラムの一部を紹介します。
・ 歌手、大橋純子さんは炭鉱で栄えた街、北海道夕張市の大衆食堂を営む家で育った。子どものころ、夕張は活況を呈していた。だが、その後すべての炭鉱は閉山し、市は財政破綻に陥った
▲沈む故郷を元気づけようと大橋さんは2007年3月、北海道出身の歌手有志と市内で開いた無料コンサートに参加した。売り上げを同市への寄付にあてようと、カバーアルバムも発売した
▲その大橋さん、73歳での別れである。1970年代後半から80年代にかけて「たそがれマイ・ラブ」「シルエット・ロマンス」などのヒットで時代を彩った。大橋さん自身はヒット曲は「歌謡曲色」が強いと感じ、当時は抵抗があったという。だが、透明感ある歌唱力は圧倒的だった。茶の間にテレビが必ずあった時代、大橋さんの歌声は思わず画面に集中させる力があった
▲著名な音楽家や歌手の訃報が相次ぐ年である。高橋幸宏さん、坂本龍一さん、谷村新司さん……。先日亡くなった歌手、もんたよしのりさんと大橋さんはデュエット曲を発表したこともある。がん治療から復帰した19年、小紙の取材に「細く長くでいい、頑張っていこう」と語っていた。ファンと歩みながら重ねた年月である
▲「歌手のいいところは、歌を残しておけること」「夕張の暗い冬が、いつまでも続くとは思いません」。これも、大橋さんが残した言葉だ
▲その通りに、多くの人がきのう、大橋さんのヒット曲を口ずさんだはずだ。そして、夕張の再起への努力は続いている。
・ 形の上では似たところがあっても、まるっきりかけ離れた二つのものをたとえる「月とすっぽん」。英語にも似た慣用句がある。「チョークとチーズ(chalk and cheese)」という
▼一説では慣用句の元はこんな話である。13世紀の英国。ある店主が店で売るチーズの目方を増やそうと中にチョークをこっそり混ぜた。これを知った客たちは腹を立て「チーズとチョークはまるで違うものだ」
▼現地を心配しつつ二つの言葉を比べる。「cease-fire(停戦) and pause(戦闘休止)」。イスラエルがパレスチナ自治区ガザ北部で1日4時間の戦闘休止を行うという。停戦ではない
▼なるほど、停戦も戦闘休止も戦闘行為が一時的に止まっているという点では似ているものの、やはり「チョークとチーズ」だろう
▼国際法上の明確な定義はないが、攻撃の意思を一時的に脇に置くのが「停戦」とすれば攻撃の意思を維持しながら民間人避難などのため時間と地域を限って攻撃を見合わせるのが「戦闘休止」だろう。敵意という点で根本が違う
▼ガザの人道危機に対する国際社会の非難を受けたイスラエルが譲歩し、受け入れた戦闘休止とはいえ、実現したいのは停戦であり、その先の和平である。1日4時間で、どれだけの命が救えようか。戦闘休止がチーズに見せかけたチョークに思えてならぬ。
※ シルエット・ロマンスは名曲です。寂しいですね。
ガザを語るなら、人質解放を先に報道してほしいですね。
また、ハマスは国家ではないので、国際法に縛られないのでは?
それだとしたらやっかいですね。