とっつきづらい哲学や心理学の内容を、出来るだけわかりやすく完結に お伝えすることを目的としたチャンネルです。
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ハイデガーはドイツの実存主義哲学者です。 1889年から1976年まで生きた人なので、 本当に最近の哲学者ですね。 また『人間の条件』で有名なハンナ・アーレントと愛人関係であったことも有名です。 ハイデガーは1928年にフッサールの後継者として フライブルグ大学の教授になります。 その後、同大学の大学総長まで上り詰めるのですが、 同時期にナチスに入党していたことが問題視されると、 翌年には大学総長を辞任して、その後は山籠りしながら執筆活動を続けます。 (ナチス入党の件は生涯黙秘を続けました) ハイデガーは1923年、ゲッティンゲン大学での講義にて 自身のルーツをこう語っています。 「探究における同伴者は若きルターであり、 規範はルターが憎んだアリストテレスであった。 衝撃を与えたのはキルケゴールであり、 私に眼をはめ込んだのはフッサールである」 この辺りからも、実存主義と現象学に大きな影響を受けていることを見てとれますね。 ハイデガーの哲学は超難解として有名です。 実は私が初めて読んだ哲学書が彼の【存在と時間】なのですが 中学生だった私にとってはもはや何か別の言語で書かれた書物に思えて 脳を粉々に粉砕されたのを思い出します。 彼の著作が難解だとされるのには色々理由があって、 一つはとにかく造語が多いこと。 これはハイデガーが人気を博した要因でもあるのですが すでに存在する言葉をわざわざ別の造語にカッコよく言い換えて表現するので とにかくそれに追いついていけないんですね。 もう一つの理由は彼の厳密性を好む性格にあります。 例えば、ハイデガーは人間のことを【現存在】と表現します。 めちゃくちゃカッコ良いじゃないですか。 しかしこれはただ単に響きが良いからそう表現しているわけではなく、 人間と表現したときの『それぞれ個人の個性を一括りにしてしまう危険性』 を避けるための意図があると考えられます。 このように、他の哲学者にはない独特の表現が多用される彼の著書は 哲学における鉄壁の壁として今でも多くの脳を破壊しているのです。 閑話休題。 ハイデガーの哲学は【現象学的存在論】などと表現されます。 この思想は、どのような時代背景から生まれたのでしょうか? 20世紀初頭のヨーロッパでは、科学的な技術革新や、 社会の組織化、マスメディアの台頭による情報の伝達速度向上などにより、 世の中が急激に便利になっていました。 しかし、その利便性の反動で、 人間は主体的な判断力が鈍り、どんどん受け身になって 個性が失われ、平均化していく傾向がありました。 これは今の私たちには想像しやすいのではないでしょうか? 20世紀初頭と比べて劇的に便利になった現代において、 また、情報が異常に飛び交う世の中において、 人々は受け身の姿勢を強め、情報により世の中の風潮が形作られ、 それによって没個性化、平均化が進んでいく。 そのような鬱屈とした空気感が、当時のヨーロッパにも蔓延していたのです。 また、1923年にはドイツにてハイパーインフレが起こりました。 それまで信じてきたお金の価値があっという間になくなったのです。 同時に、科学が発展しても一向に世の中は平和にならずに戦争三昧だし、 宗教の力も弱まっていた世の中において、 先行きに対する強烈な無力感や不安があったことは想像に難くありません。 そこで登場したのが【実存主義】です。 平たく言えば、 『人間とは何者か?』 という命題を哲学の中心におき、 それによって人間の進むべき道を提示しようという試みです。 ハイデガーは、その中でも特に人間の存在(あり方)に着目した哲学者であり、 その存在を解き明かす鍵として、それまでの哲学ではあまり触れられなかった 【時間】を採用したことに特色を持ちます。 彼の代表的著作が【存在と時間】なのも、それを表していますね。 詳しい部分は次回の動画で解説をしますが、 彼の考えによると、人間は時間の中に放り込まれた存在だとされます。 現在の自分から過去を見ると、 過去に存在した様々な時間が自分に流れ込んでいることがわかります。 それは、国としての時間であり、民族としての時間であり、 宗教としての時間であり・・・ 様々な時間が自分に流れ込むことにより、 今の自己を形成していると考えるんですね。 この考え方を紐解くと、ハイデガーがナチスに傾倒したことも 少しだけ理解できるような気がします。 話が逸れました。 ハイデガー哲学の肝は、この『時間(世界)に投げ込まれた人間が見る未来』にあります。 人間を世界に投げ込まれた目的も理由もない存在だと仮定して、 その上で未来にあるものを考察することで、 必然的に人間の本質が見えてくる。そのように言うのです。 ハイデガーが未来に見たものはなんだったのでしょうか? 次回はハイデガー哲学の核心について解説をします。
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