卒業式のシーズンです。
それに関して、式辞を読むとき、包みからどう出してどうしまうか、作法があるのです。紹介します。
私は、校長式辞や教育委員会告示を読むときに、これを読んで練習しました。
かっこいいですよ。
式辞の作法 【出典 式典の作法7 -柴崎直人の食う寝る作法に読む作法-より】
もう卒業式を終えた学校もあるかもしれません。お伝えしたいことはまだあるのですが、今回を式典の作法の一応の区切りとして、最後に式辞の扱いに触れたいと思います。
正式な式辞は外包みに入っていますね。
これら折紙(免許状などは奉書紙を縦長に二つ折りにしたものを用いるのでこう呼ばれます。「折り紙付き」の語はここから出ました)の作法は、小笠原流が日本文化に刻んだもの。もはや日本から忘れられかけているこの原点の作法をここにご紹介できるのは小笠原流の礼法家として大きな喜びであります。
日本に免許状を発行する芸事は数ありますが、いかがですか?
先生方は正式な許状の渡し方をふまえたうえで(お弟子さんにお渡しになっておいでですか?
もしかしたら本邦初公開かもしれない折紙の作法です!
まず片手ずつさし出して両手で外包みごと持ち上げます。
乳通り(胸の高さということか?)に円相(腕を円くする?)で持ったなら、右手で下側の折りしろを平らにのばします。
次いでそのまま右手を上の折りしろに移動させて、同じようにのばします。
なぜこの順番かといえば、慶事の折形の裏側は、下からの折りしろを上からの折りしろの上部に折り重ねるからなのです。喜びは無限に伸びていくようにという思想ですね。
そして正面から右手の親指を差し込むようにして右方向に外包みを開きます。
折形は必ずこのように右利きの人が右手で右方向に開けやすいように「右封じ」に折られているものなのです。
もし意図的に「左封じ」がなされた書状が届いたなら…、その中身は離縁状か決闘状のどちらかなのです。
さて、そのまま右手の指を四本揃えて折形の中にさしこみ、中身(式や許状)を下から支えるようにして引き出します。
中身をいったん外包みの下に差し込み、外包みを閉じて、右手を上方になぞるようにずらして上の折りしろを元のように折り戻します。
そして下の折りしろを折り戻してから中身を右手で右方向に引き出し外包みの上に重ねます。
右手で書状の右端を開けて、開きながら読み上げます。
許状の場合には右方向にあけてからいったん左側に伏せるように全体を返して、左手親指に許状をひっかけるように抑えて左側を開けます。
このとき外包みは左手の四本の指で下から支える形になっている…。
えー、ご理解いただけてます?
この作法を手慣れた人が行いますと、息をのむほどカッコイイ流れとなるのです。
読み終えましたら、先ほどの逆をいけばよいだけです。
式辞・許状を閉じ、外包みの下に右側から差し入れて、折りしろを下→上の順に伸ばしてから右に開き、中身を差し込みます。
表を閉じて、上→下と折りしろをしっかり折つて閉じましょう。
この包みを相手に渡すときには右方向に九〇度ずつ二度にわけて取り回します。
これだけ知っていれば、日本のあらゆる儀式に対応できます。
くれぐれもTPOに応じて適宜省略をお忘れなく!
(小笠原流礼法総師範、学習院大学講師、聖徳大学附属中高教諭)