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<「漢字の学習の大禁忌は作輟なり」・・・「作輟(サクテツ)」:やったりやらなかったりすること・・・>
<漢検1級 27-③に向けて その21>

●文章題③も芥川龍之介。「地獄変」からです。芥川龍之介の小説、ホントに久しぶりに読んでて嵌ってしまった・・・しばらく、龍之介です(^^;)
●文章題③&④は「地獄変」から・・・文章題⑤は「仙人」の予定←短編だけど面白かった🎶
●今回は、難度からしたら、80%(24点)以上はとりたいところ・・・・。制限時間は10分以内ですね(^^)
●文章題③:次の文章中の傍線(1~10)のカタカナを漢字に直し、傍線(ア~コ)の漢字の読みをひらがなで記せ。(30) 書き2×10 読み1×10
「堀川の大殿様のやうな方は、これまでは固より、後の世には恐らく二人とはいらつしやいますまい。噂に聞きますと、あの方の御誕生になる前には、大威徳明王の御姿が御母君の夢枕にお立ちになつたとか申す事でございますが、兎に角御生れつきから、並々の人間とは御違ひになつてゐたやうでございます。でございますから、あの方の為さいました事には、一つとして私どもの意表に出てゐないものはございません。早い話が堀川のお邸の御規模を拝見致しましても、壮大と申しませうか、豪放と申しませうか、到底私どもの
(1)ボンリョには及ばない、思ひ切つた所があるやうでございます。中にはまた、そこを色々とあげつらつて大殿様の御性行を始皇帝や
(ア)煬帝に比べるものもございますが、それは
(イ)諺に云ふ群盲の象を撫でるやうなものでもございませうか。あの方の御思召しは、決してそのやうに御自分ばかり、
(2)エイヨウ栄華をなさらうと申すのではございません。それよりはもつと下々の事まで御考へになる、云はば天下と共に楽しむとでも申しさうな、
(3)ダイフクチュウの御器量がございました。
・・・さやうな次第でございますから、大殿様御一代の間には、後々までも語り草になりますやうな事が、随分沢山にございました。大饗(おほみうけ)の引出物に
(ウ)白馬ばかりを三十頭、賜はつたこともございますし、長良の橋の橋柱に御寵愛の
(エ)童を立てた事もございますし、それから又華陀(くわだ)の術を伝へた
(4)シンタンの僧に、御腿の
(オ)瘡を御切らせになつた事もございますし、・・・――
・・・かやうな御意で、娘はその時、紅の
(カ)袙を御
(5)ホウビに頂きました。所がこの袙を又見やう見真似に、猿が恭しく押し頂きましたので、大殿様の御機嫌は、
(キ)一入よろしかつたさうでございます。でございますから、大殿様が良秀の娘を御
(6)ヒイキになつたのは、全くこの猿を可愛がつた、孝行恩愛の情を御賞美なすつたので、決して世間で兎や角申しますやうに、色を御好みになつた訳ではございません。尤もかやうな噂の立ちました起りも、無理のない所がございますが、それは又後になつて、ゆつくり御話し致しませう。こゝでは唯大殿様が、如何に美しいにした所で、絵師風情の娘などに、想ひを御懸けになる方ではないと云ふ事を、申し上げて置けば、よろしうございます。
・・・さやうな男でございますから、
(7)キッショウテンを描く時は、卑しい
(8)クグツの顔を写しましたり、不動明王を描く時は、無頼の放免の姿を像りましたり、いろいろの
(9)モッタイない真似を致しましたが、それでも当人を詰じりますと「良秀の描かいた神仏が、その良秀に
(ク)冥罰を当てられるとは、異な事を聞くものぢや」と
(ケ)空嘯いてゐるではございませんか。これには流石の弟子たちも呆れ返つて、中には未来の恐ろしさに、
(コ)匆々暇をとつたものも、少くなかつたやうに見うけました。――先づ一口に申しましたなら、慢業
(10)チョウジョウとでも名づけませうか。兎に角当時天が下で、自分程の偉い人間はないと思つてゐた男でございます。・・・」(「地獄変」(芥川龍之介))
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(1)凡慮 (2)栄耀 (3)大腹中 (4)震旦 (5)褒美 (6)贔屓 (7)吉祥天 (8)傀儡 (9)勿体 (10)重畳
(ア)ようだい (イ)ことわざ (ウ)あおうま (エ)わらわ (オ)原文ルビは「もがさ」だが、現行訓では「かさ」) (カ)あこめ (キ)ひとしお (ク)みょうばつ(「めいばつ」も可か) (ケ)そらうそぶ (コ)そうそう
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