FREAKY 13 DEAKY

酔いどれの誇りと踊る熊へ

年末には、松本清張「天城越え」

2022-12-17 15:39:37 | 読書感想
今年の紅白に石川さゆり出場。

なぜか思い出すのは「天城越え」。


そして清張の「天城越え」は40ページほどの短編小説。

この小説は本当にタイトルが独り歩きしている。

歌と小説は中身まったく関係なし

それくらい秀逸なタイトルだということだ。

とにかく言葉の響きがすこぶる良い。

カッコいいのだ。


伊豆半島の鬱蒼とした森の中に心臓破りの峠の坂と暗いじめっとしたトンネルも思い浮かんでくる。
現代は整備され自然美しいツーリングコースになっているのだろうが。


物語も本当に不可思議。


これは清張が人間の心の心境ほど不可思議なものはないというメッセージと感じる。


主要登場人物も4人のみ。


家出少年と温泉旅館に勤めていた酌婦と、どこか暗い影を落とす土工の流れ者と事件を追う刑事。


刑事以外みんな「ワケアリ」人間。



ジメジメドロドロした人間関係。


すごく面白くてすぐ読めるからおススメ。


清張小説の底流には貧乏の苦汁と真っ暗さが際立ている。



天城峠のじめっ暗いトンネルを抜けると異国に入った感覚、行きはよいよい帰りは恐いを地でいくヒトコワ世界を削ぎ落した簡潔な文体で描き切っている。
清張の傑作には短編が多い。映像化されるのも敢えて書かなかった余白が想像の余地になっているからだ。
さすが芥川賞作家。


怨念と憎悪を柱にしているのは間違いない。


そしてこの短編を書いたキッカケともいえる川端康成の「伊豆の踊子」への返答篇といえると想像するととてもロマンがある。

赤貧洗うがごとしで生きて抜いた清張には育ちがよく華やかな経歴の川端康成がどう映っていたのか。

怨念と憧れ。自信とコンプレックス。色んな色が混じり合った世界が渦巻いている。


私自身のなかにある暗い部分がその世界に囚われるのだ。





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一人だけの軍隊/ランボー

2022-08-12 16:17:09 | 読書感想
これだけ映画版と原作の辿る道に乖離があるのはめずらしい事でもないのか。

作者デイビッド・マレルはスタローンの映画は嫌っていない。

原作小説のランボーは凄絶に死ぬが、映画版は生き延びる。

作者はそのことについてランボー2の小説の前書きで感謝している。

映画はアクションに徹している。小説は男と男の一対一の戦いだ。

どちらも孤独を背負いどうにもならない運命的な出会いと不思議な心の交流。

でも生易しくない血が噴き出る暴力の交流。

そして山と森の容赦しない大自然の恐ろしさ。

不思議だ、殺し合わなければラブストーリーにも見えるような残酷な戦いと殺し合いの連続場面。


これは映画では描かれていない。アクションに絞っているから。

自分の弱さとの向き合い方。本当に強いとはなにか。死ぬとは。

こんなことを想像させる場面が畳みかけるようにやってくる。


デイヴィッド・マレルの筆力。確かな自然描写。文章のセリフの力強さ。美しさ。


だからこれは乱暴ではない。

むしろ、詩人ランボーの詩のごとく。地獄の「冬の」季節というところか。

いい小説を読んだ。


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中年男に哀愁は似合わない

2022-01-15 17:26:07 | 読書感想
黒川博行「熔果」

ヤメ刑事中年男二人が福岡の金塊強奪事件をめぐって半グレとヤクザを向こうに回し大暴れする物語。

オモシロー!
チームワークは嫌いだが、バディものは大好き。
とにかく仲がいい。
様々な事情で警察をクビになった二人。ヤメ刑事だ。
相棒が行き過ぎたことしても絶対に否定しないしむしろ褒める。
普段からお前といるから心強く楽しい毎日が過ごせると言い合っている。気持ち悪くなる一歩手前で抑えているのが面白い。
BLにならないのは男同士の分かり合え気の置けない二人の心理バランスが絶妙だから。
しかしこんな出会いはないと思う。
男でこんな小1の時代の様な親友を持つなんて有り得ない。
だからこれは友情のファンタジーだ。
現実世界でこんな相棒がいたら本当に幸せだと思うよ。

ハードボイルドだがシンミリしない陽の方だから。


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「人を動かす」という大きな誤解

2019-05-31 16:42:04 | 読書感想

結論。自分の為に他人を動かそうと思っていたら皆が離れていった。

人を操ろうみたいな浅はかな考え方がすでにダメだ。

周囲の人たちが俺自身や行動なり生き方に感銘して自然と動いてくれるんじゃなきゃ。

その人の魅力が「人を動かす」なんだなぁ結局。

カーネギーおじさんもそれを言ってるんだよ。

 

 


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馳星周「ゴールデン街コーリング」読みました

2019-01-25 18:33:48 | 読書感想
酔いどれの街。ゴールデン街の一角にあるお店「マーロウ」で働く人とそこに集った仲間たちの人間模様であり青春小説。


「マーロウ」はゴールデン街に実際にあった伝説のコメディアン内藤陳の店「深夜プラス1」がモデルだ。


馳星周は処女作「不夜城」を上梓しその名をあげた作家。


ボクはこの「深夜プラス1」に大学生のころ通ったことがあった。


冒険小説や推理小説や冒険小説が好きな連中が毎夜集まって来た。


ボクも本読みの端くれを自負してこの店に行ったが連中の比ではなかった。

映画も本もスゴイ量だった。またその洞察力も舌を巻いた。


バー「マーロウ」のオーナー斉藤顕は昔その名を馳せたコメディアン。

無類のオモシロ本好き。そして筋金入りの酒乱だ。

ボクもこのモデルとなった内藤陳がお客とケンカになったところに遭遇したことがある。


もうかれこれ30年前の話しだ。まだまだバブル真っ最中。地上げ屋が跋扈していた時。


ゴールデン街もその波に呑まれそうになっていた。


そこに放火事件と殺人事件が起こる。

主人公がその犯人探しと「本の雑誌」で連載を持って物書きとして生きていく方向が定まってくる様子を描いている。



馳星周の自伝小説だから殺人事件が起こるとは思わなかったけど。


そしてお客としてあの店に飲みに行くのとそこで働くのとでは天国と地獄の差があったとは…。


突然ですがあなたは気づいていらっしゃると思うけど、ボクはベロベロに酔っぱらってうちに帰れなくなった時

会社のベンチシートで仮眠してから帰宅します。


その時に卓上パソコンを使ってこのブログを書いています。


書いたことも書いた内容も全て忘れているのに酩酊状態で書くのです。


むかしは次の日に削除していましたがそれをやめました。


酔っぱらっていようが恥ずかしいだろうがそんな自分自身を笑ってやれと考えるようになり削除をやめたのです。


頭が馬鹿になっている自分を無かったことにしないようにすると決めました。


アル中は病気です。


お酒で人間関係を壊したらその時点でアル中です。


お店で出会った仲間と絶交になったことも沢山あります。

そしてこの手紙を読んでくれたあなたもボクを嫌いになるかもしれません。


アル中は人間関係を破たんする病気です。


だけども自分の姿の一部です。無かったことにしないわけにはいきません。


酔いどれの誇り、なんてカッコイイもんじゃありません。バカなだけす。


でもボクは書き続けようと思います。


この本を読んでその気持ちが強くなりました、というのがボクの正直な感想です。






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