<大飯原発>「安全性に欠陥」 福井地裁、運転差し止め判決
毎日新聞 5月21日(水)21時16分配信
樋口英明裁判長は住民側の主張を認め、運転差し止めを命じた。東京電力福島第1原発事故を念頭に「大飯原発は地震の際の冷却や放射性物質の閉じ込めに欠陥があり、原発の運転で人格権が侵害される危険がある」と厳しく指摘した。
原発の運転差し止めを命じた司法判断は福島事故後初めて。電力会社の再稼働判断にも影響を与える可能性がある。関電側は控訴する方針。
【大飯原発】3、4号機の運転差し止め 福井地裁判決
過去に運転差し止めが認められたのは、2006年にあった北陸電力志賀原発2号機(石川県志賀町)に関する金沢地裁判決(高裁で逆転し確定)だけだった。
主な争点は▽耐震設計の基準となる「基準地震動」は適切か▽大地震の際に冷却機能が働くか▽使用済み燃料プールの放射能漏れ対策は十分か--などだった。
基準地震動について関電は、敷地周辺の断層による地震を想定すると700ガル(現在は856ガルに引き上げ)が適切と主張。
しかし判決は理論上の数値計算よりも、各地の原発で05年以降、基準地震動を超える揺れが5回観測されている事実を重視し、大飯でも同様の危険があるとした。
冷却機能に関して判決は、想定を超える地震が起こればメルトダウンに結びつくと指摘。 地震動が想定内でも電源が失われる恐れがあると指摘した。
さらに燃料プールに関しても、福島原発事故の際に燃料プールが危機的状況に陥ったことを例に、原子炉格納容器と同等の、より堅固な施設が必要とした。
また、訴えを起こせる住民の範囲に関しては、福島事故の際、原子力委員会委員長が原発から250キロ圏内の避難勧告を検討した経緯から、250キロ圏内にまで広く認めた。
大飯3、4号機は昨年9月に定期検査のため運転停止した。
これに先立つ同年7月に関電は再稼働を申請しており、現在、原子力規制委が審査中。
判決には、判決確定前に内容を実行する「仮執行宣言」が含まれていないため、判決が確定しない限り、審査に適合すれば原発は運転できる。
ただ、再稼働の前提として地元同意は不可欠で、司法判断が確定しない中での再稼働は事実上、難しい状況だ。【竹内望、村山豪】
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