内容(「BOOK」データベースより)
あの頃、私は母さんがいつかおばあさんになるなんて、
思いもしなかった。ずっと母さんを好きでなかった娘が、
はじめて書いた母との愛憎。
佐野 洋子さんの本は何冊か読んだことがあります。
歯切れの良い文章、凛とした強い意志、独立心、・・・。
この本も そんな軽いエッセイ集のつもりで手にしました。
読み始めて すぐに読むのをやめようと思ったくらい
何か大変なものを 読んでいるという気持ちになりました。
他人に一番知られたくないところを ズバズバと
これでもかというくらいに書いてあり 私のほうが苦しくなります。
でもそれは わたしの気持ちと重ね合わせていたためかもしれません。
あ~こういう母娘もいたんだと思いました。
この本を読みながら 私は娘になったり、母になったり、
その時々で感情が交錯して 疲れました。
私が一番衝撃的だったのは 洋子さんが認知症になってしまった
母に会いに行き「添い寝」をするところ。私は多分 できないと思う。
これほど実母との確執を赤裸々に描いていながら
高級老人ホームに入れたことを「金で母を捨てた」と
何度も言っている洋子さん。
そんなことないよ、洋子さん。
こうして「シズコさん」のことを本にして
シズコさんの家事能力の素晴らしさや
母から自然と身に付いた料理や裁縫の話など、
客観的に見つめていて 認めている部分もあるように感じました。
そして本の最後に 乳がんが骨に転移した、私もすぐそっち
(なくなったお母様のほう)に 行くよ、という文章があり
遺書のようなその一文に 胸が痛くなるような気持ちになりました。
洋子さんには「娘」がいません。
もしいたら 母に対する思いは変わっていったかも・・・。
昨年読んだ本で「ずっとやくそく」 黒柳徹子、鎌田實(著) の中で
「かぞく」という章で鎌田氏が
「いい家族を作るためにはお互いがちょっと歩み寄ったり、
心を配ったり、ときには時間をたっぷりかけながら、
育てていく必要があるように思います。そう、
いい家族はあるものではなく、育てるものなのかもしれません。
いま、いい家族の中にいる人は、その家族のみんなが
目にみえないところで努力したり、心配りをしているから、
なのかもしれません。きっとそうだと思います。・・・」
なぜか 読み終わってこの文章を 思い出しました。
つらい部分も受け入れられないところもありましたが
やっぱり 読んでよかったと思いました。