「赤朽葉家の伝説」 桜庭一樹著
“辺境の人”に置き忘れられた幼子。
この子は村の若夫婦に引き取られ、
長じて製鉄業で財を成した旧家赤朽葉家に望まれ輿入れし、
赤朽葉家の“千里眼奥様”と呼ばれることになる。
これが、わたしの祖母である赤朽葉万葉だ。
―千里眼の祖母、漫画家の母、そして何者でもないわたし。
高度経済成長、バブル景気を経て平成の世に至る現代史を背景に、
鳥取の旧家に生きる三代の女たち、
そして彼女たちを取り巻く不思議な一族の姿を、
比類ない筆致で鮮やかに描き上げた渾身の雄編。 東京創元社
友人が貸してくれた本。
友人・知人が貸してくれる本は 私が書店や図書館で
多分手に取ることはない本 の場合が多いです。
だから新鮮で いろいろな作家ともめぐり合える機会が増え
楽しませてもらっています。この本も正にそういう一冊でした。
何とも不思議な世界、ずいぶん昔の話のようでもあり
でもよく読みなおしてみると 戦後数年がたった頃から
現代までの話しで 私が生まれてからの年数と大体同じぐらいです。
ということは この物語の話し手である「瞳子」(20代)の若い人
から見ると 戦後の日本、高度経済成長、バブル景気と崩壊、
と私達が経験、体験してきたことが もうすでに歴史教科書の
一部分のようになっていたのだと 改めて思い知らされました。
鳥取の旧家に生きる三代の女たちの
風変わりな激しい人生の物語に圧倒され
かなり読み応えのある長編ということもあり
読み終わった後は充実感とともに けだるい疲労感も味わいました。
三部構成のうち
一部と二部は捨て子である祖母・赤朽葉万葉から始まり、
母・赤朽葉毛毬、の物語で 場面展開も速く
随所に摩訶不思議な現象もちりばめられ 面白かったです。
それに比べて三部の現代版は少しミステリー調になって
また わたし・赤朽葉瞳子がいたって普通の娘で
物足らない平凡な話しに感じてしまいました。
ただ「赤朽葉家」の内情は かなりドロドロした話しなのに
読後感が 意外とさわやかで後味は良かったです。