「おくりびと」 今年10本目です。
本当に 良い映画でした。
「納棺師」という聞き慣れない言葉でしたが、
一昨年 義母の葬儀のときに 映画と全く同じ作法で
納棺していただいたことを 思い出し あの人たちが
「納棺師」という職業だったとわかりました。
あの時は泣かなかったのに 画面を見ているうちに
義母とダブってきて 涙がこぼれました。
何と 厳粛で美しい所作なのでしょうか。
最後まで 身ぎれいにして 旅だってほしいとの
遺族の思いが ひしひしと伝わってきます。
こうして 最後には 誰もがお世話になるのに
世間では「忌み嫌う職業」である矛盾や
漫然とノーテンキに生きてきた主人公が
第二の人生で「納棺師」という職業を選んだ
偶然の不思議さも感じました。
「普通の仕事をして」と懇願する妻に
「人間 生まれてきたら 皆死ぬんだ。
死ということは日常なんだ。普通のことだよ。」
と反論する場面に はっとしました。
この映画の主人公は 本木雅弘 以外には考えられないほど
ピッタリだと思います。誠実でありながら その目は
いつも 他の人と違うものを見ているような表情、
物静かで そして芯の強い信念のようなものを
感じさせてくれます。
この映画では「死」の対極に
「生・食欲」が象徴的に 描かれています。
ふぐの白子やフライドチキンを 手づかみで
むさぼり食う行為は 生への人間の執着心そのものでした。
誰の命も 限りあるものです。
私達は その時まで 一生懸命生きなくてはならないと
しみじみ 思いました。