内容紹介
寛政3年、改革令に触れて、版元の耕書堂蔦屋重三郎は手鎖50日、
身代半減の刑を受けた。
それでも蔦屋は、幕府の倹約令に反旗を翻すように、多色の雲母摺りで
歌舞伎役者の大首絵刊行を試みる。
絵師に選ばれたのが、東洲斎写楽。本業は能役者で斉藤十郎兵衛という男だった。
大量出版のため、助っ人に借り出されたのが、山東京伝と、のちの葛飾北斎と十返舎一九。
世間をあっと言わせようという蔦屋一世一代の大勝負だったが……。
屈指の人気時代小説家宇江佐真理氏が、デビュー前から温めていたテーマに取り組んだ。
江戸の繁栄の狭間に一瞬だけ光り輝いた、奇矯の絵師の真実に迫る渾身の一作。
「寂しい写楽」という題名にひかれて手に取った本です。
しかし「写楽」という謎めいた魅力的な主人公の話かと思ったら
全く違いました。
どちらかというと蔦屋重三郎の話です。
助っ人の山東京伝、のちの葛飾北斎と十返舎一九が主な登場人物で、
ほかにも大田蜀山人や喜多川歌麿、滝沢馬琴らが登場して、
それぞれに重要な役割を担います。
これだけのそうそうたる人物が 同じ時期に同じ街で活躍していたというのも
興味深いです。
それだけに個々の人物をもう少し掘り下げて、あるいは誰かに絞ってあれば
もっと面白かったのでは・・・。
「写楽」というのは一人の人物、というよりも蔦屋重三郎が仕掛けた
プロジェクトチームの作品という発想は 私には新鮮でなるほどと思いました。