朝、起きて居間へ下りたらいつもよりかなり静かだ。
テレビも映っていなくて静まり返った不思議な空間。
しかし、その世界も数秒で破られた。
私が目覚めたのを察知したアノ人がキッチンから出てくるなり私に叫んだ
「お父さん 大変 大変なんだから」と云う。
数日前に同じ言葉を聞いたばかりだ。あの安倍晋三元首相が狙撃された時だった。
今度は何事が起きたのだろうと身構えたら、何とテレビが壊れたと云う。
色々試してみたが、ナルホド映像が出ない。音声だけは出ることがあるが画面には何も映らない。
まぁ仕方がない。諦めよう。私はテレビなんか無くても良い。
ところがサスペンス大好き人間のルンバは、私に纏わりついて「テレビが無いと困る」と訴える。
昨夜の「口を揃えた怖い話」なんて云うテレビ番組を食い入るように観たから何かにとりつかれたのかも知れない。
だから原因は私には無い。
「そんなにテレビが欲しいのなら家庭内でクラウドファンディングをしよう」と提案したらキョトンとするルンバ。
「つまり皆でお金を出し合って買うんだよ」と説明した途端、ルンバはキッチンへ、スリスリは自分の部屋へと瞬間移動し気配を消した。