自己と他者 

自己理解、そして他者理解のために
哲学・ビジネス・雑記・洒落物など等

松下幸之助

2005-10-27 02:20:44 | 経営-ミッション-ビジョン-グランドデザ

松下政経塾編『松下政経塾塾長講和録』(PHP)
 尊敬する松下幸之助氏がPHPの人たちと考えに考えて
本にしたという新しい人間観。
 P.119新しい人間観の提唱
 宇宙に存在するすべてのものは、つねに
生成し、たえず発展する。万物は日に新たであり、
生成発展は自然の理法である。
 人間には、この宇宙の動きに順応しつつ万物を
支配する力が、その本性として与えられている。
人間は、たえず、生成発展する宇宙に君臨し、
宇宙にひそむ偉大なる力を開発し、万物に与
えられたるそれぞれの本質を見出しながら、これ
を生かし活用することによって、物心一如の真の
繁栄を生み出すことができるのである。
 かかる人間の特性は、自然の理法によって
与えられた天命である。
 この天命が与えられているために、人間は万物
の王者となり、その支配者になる。すなわち人間は
、この天命に基づいて善悪を判断し、是非を定め、
いっさいのものの存在理由を明らかにする。そして
なにものもかかる人間の判定を否定することはで
きない。まことに人間は崇高にして偉大な存在である。
 この優れた特性を与えられた人間も、個々の現実の姿を
見れば、必ずしも公正にして力強い存在とはいえない。
人間はつねに繁栄を求めつつも往々にして貧困に陥り、
平和を願いつつもいつしか争いに明け暮れ、幸福を
得んとしてしばしば不幸におそわれてきている。かかる
人間の現実の姿こそ、自らに与えられた天命を悟らず、
個々の利害得失や知恵才覚にとらわれて歩まんと
する結果にほかならない。
 すなわち、人間の偉大さは、個々の知恵、個々の力
ではこれを十分に発揮することはできない。古今東西
の先哲諸聖をはじめ幾多の人々との知恵が自由に、
何のさまたげも受けずして高められつつ融合されて
いくとき、その時々の総和の知恵は衆知となって天命を
生かすのである。まさに衆知こそ、自然の理法をひろく
共同生活のうえに具現せしめ、人間の天命を発揮させ
る最大の力である。
 まことに人間は崇高にして偉大な存在である。お互い
にこの人間の偉大さを悟り、その天命を自覚し、衆知を
高めつつ生成発展の大業を営まなければならない。
 長久なる人間の使命は、こ天命を自覚実践することに
ある。この使命を明らかにし、その達成を期せんがため、
ここに新しい人間観を提唱するものである。