自己と他者 

自己理解、そして他者理解のために
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五條瑛『心洞』

2006-08-20 10:25:44 | 小説

五條瑛『心洞』(双葉文庫)を読んだ。

革命シリーズ第三巻(全10作予定)。

印象に残った部分

「人という動物は、欲求の塊なのよ。゛欲しい゛と思う気持ちが、どんな動物よりも大きくて強い。例えば、食べたい、寝たい、交尾したいという基本的な欲求は全ての動物にあるけれど、いずれも節度を知っている。そうすることで種のバランス、群れの秩序が保たれてきたのよ。だけど、人間は違うわ。いったん欲しいと思い始めると、それを止めることをしない。一つ手に入れば、また次を。それが手に入れば、さらに次へとね。人はその欲望を゛向上゛という言葉に置き換え、正当化してきた。そうやって節操のない欲望が秩序を壊し、自らを滅ぼしていくという現実から目を背けて・・・。果てしない欲望の先にあるのは、破滅だけよ。全てにおいて完璧である必要はないのに、それに囚われ、後退を怖れている。どこかでその欲求を捨ててしまえば、信じられないくらい楽になれるのに」