硝子戸の外へ。

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通所介護の稼働率という問題について。

2019-09-22 16:29:30 | 日記
通所介護施設で働いていると、「稼働率」という言葉をよく聴く事があります。僕はへそ曲がりなので、稼働率という言葉を聞くと、やる気がなくなります。

しかしながら、利用者が来なければ、お給料も出ないという事実もある。

経営に携わる人は、営業をしてきなさい。とか、利用者数を増やしなさい。とか言うけれど、果たしてそれで利用者が増えるのかは疑問である。そして問題の根源は誰も掴み切れてはいないと思うので、その事柄に対して少しばかり持論を述べてみたいと思う。

介護保険が導入された時の多くは、明治大正生まれで、それまでになかった余暇時間の過ごし方の一つとして通所介護という選択枠が創設され、それは介護保険の補助が出るものであるから、対象者の多くが利用する事となった。また、その頃は、施設も今ほど多くなかったので、利用者はすぐに集めることが出来た。

しかし、現在の利用者の多くは戦中生まれで、終戦を十代後半、20代前半で過ごした人たちは、日本が何もないところから、豊かになるまでを過ごしていて、それは、食事も医療も十分に享受することが出来る時代であった為、寿命も延びることになった。

昨今、高齢者による自動車事故が、ニュースで流れる事が増え、その問題が指摘されているが、裏を返せば、それだけ、今の高齢者は健康状態を保てているという事であって、それは、当初の通所介護に頼らなくても、十分に自身の力で余暇時間を過ごせるようになったという事である。そして、施設が乱立している現在では利用者の分散も相まって、集まりにくい環境になった。

したがって、介護保険が導入された時とは、状況が異なるので、営業をかけても簡単に利用者は増えないという構造が出来上がったのである。

そして、どうすれば、利用者が増えるか? という問いかけに、他の施設にはない特色を打ち出してゆくとか、「具体性に欠けた回答」をよく耳にする。しかし、この問いに対して明快な答えを聞いた事がない。そこで「で、どうするの?」という質問は、誰も具体的な答えを持ち合わせていないからタブーなので、この場合の正しい解は、あえて問題解決を図らず、問題を先送りする事が、正解なのである。

現在の利用者の利用回数を増やすという方法は、月々の数字だけを追っていれば、一見、上手くいっているようにみえるが、問題の根本は解決していないので、あくまでも、短期的な結果でしかない。

攻めるリーダーがいるところは、それこそ、いろんな特色を打ち出してゆき、利用者の獲得に結果を出しているが、そのリーダーがいなくなってしまえば、たちまち衰退してゆくのは目に見えている。それは、介護現場では、世代交代という問題を初めて乗り越えてゆかねばならない事業であるので、引継げる人を育てる環境が整っていないのである。

利用者を増やす前に、その問題をクリアせねばならないのであるが、並行しながら進めてゆく方法があるとするならば、逆説的ではあるけれども、10代や20代の人達が「介護の仕事って面白そうだぞ。ちょっと頑張ってみるか」と思わせる事の出来る施設にすれば、利用者も集まるのではないかと考えたのである。

恐らく、仕事として、人のお世話をすることが「辛い事もあるけれど、楽しい」と思える現場は、利用者にも職員にも「優しい」から、人も自然に集まるのではないかと思うのである。
即効性はないけれども、優しさは、口伝によって伝え広げられてゆくであろうから、結果的には持続可能な組織を構築できるのではないかと思うのである。

しかし、これは、他を利することが前提にあるので、残念なことだけれども、今の介護現場は、自分たちの優位性を持ち続けたい人が多いので、この意見は、誰も耳を傾けてくれないのである。