硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

黒歴史はあるけれど。

2015-01-23 22:07:46 | 日記
朝からずっと流れているニュースを見て思ったことを少しだけ述べておこうと思います。

どんな宗教にも、現在の形になるまでは暗部があります。解釈の違いで争ったり、後継者の違いで争ったり、崇拝する方向の違いで争ったり、組織を守るために争ったり、指導者の頂点になるために争ったり、神の名を語り私腹を肥やさんがために争いを始めたりしてきました。でも、なぜ、純粋な宗教の違いで争わなければならないのかわかりません。目に見えないものを崇拝するだけのことなのに、人々はわざわざそこに争いの種を蒔いてきました。

また、私達は流されてくる情報をよく理解しないまま鵜呑みにしてしまう傾向があります。それが偏見を生み、争いを助長する場合があります。

ですから、情報に流されずに神の教えの本質を理解することが、争いを回避する手掛かりになりうるのではと思うのです。

誰かの言葉ではなく、内なる神の声をしっかり聴き取る事。流されてくる情報だけを全てとするのではなく、自身でしっかり吟味する事。それが平和をもたらすの鍵なのではと思うのです。

どんなに争おうとも、差別や格差はなくなりませんが、神の前だけは平等という素晴らしい思想が日常にも広がってゆけばやがて止揚にたどり着くのではないかとも思うのです。





ショッキングなニュース。

2015-01-20 23:29:24 | 日記
職場のテレビが不穏なニュースを流していた。よく見てみると人質が日本人であった。嫌な感じのするニュースである。

しかし、よく考えてみれば、私たちがよく耳にするグローバルスタンダードとはこういう事なんだと痛感した。日本人には理解しづらい感覚であるけれど、テロには国境がない。テロを起こす人々にとって敵視する理由ができてしまえばどんなに距離があろうとも関係ないのである。語学を学びビジネスを世界に展開し大きな利益を得ることだけがグローバルではないのである。

日本はグローバルスタンダードに欲望する先進国であり、英仏米と協調している国なのであるから、彼らから見て、極東の島国であろうとも日本人の人質を切り札とし保有しておくことは損のないカードなのだったと思う。しかし、このことにより「日本人だから」という考えはグローバルスタンダードの中では通用しないことが明白になったように思う。

政府は中庸の立場をとっていると声明を出しているけれども、どんな形であれ資金援助を決めた時点でもはや中庸ではない。中庸を貫くのであれば、批判されようが知らぬ存ぜぬを押し通すべきであろう。

また、資金援助の声明を出す前にアラビア半島の歴史やイスラム過激派の歴史を専門としている人たちの意見は聞かなかったのであろうか。
シリアで行方不明になった日本人の情報は掴んでいなかったのであろうか。

このタイミングで動画をあげてくる彼らの中にはかなりの切れ者が存在していると思うから、うかつな判断は先々まで影響を及ぼすと思う。

最悪の結果にならない事を祈るばかりである。





少年はなにを思ったのか。

2015-01-18 22:08:01 | 日記
悪戯を動画にアップし逃走まではたらいた少年がようやく逮捕された。その行動はテレビのニュースでも多くの時間を割いて報道していたが、それはある意味少年の思い描いた妄想を実現化させたのではないかと思う。しかし、少年は報道の大きさには見合わないほど社会の大きさを知らない。国家権力をあざ笑うかのようなコメントは、少年の小さな世界をよく表していたように思う。

自身の行動を動画にアップし存在を知らしめることは、自分自身は自身の力で存在しているのだという気持ちにさせるが、他者が彼の存在を承認したものではないということを少年は知らない。デジタル化され、生の反論を受けることのない、ぬるま湯に浸かりきった空虚な自我は、他者と向かい合わない限り充足させることはできない。

少年は逮捕されたことにより、生身の社会から否定されたことによって、事の重大さを知ることになるだろうと思うけれども、少年の予想通りに事を進めてしまい調子に乗せてしまったメディアにも考えなければならないことが多いように思った。


成人式の想い出。

2015-01-17 10:35:37 | 日記
昨日、職場で雑談をしていた時に対話をしていた人から「成人式の想い出ってありますか? 」と、聞かれた。もう、ずいぶん前のことなので記憶はおぼろげであったが、断片的に風景が浮かび上がってきた。

まだ人を好きになる事がわからず、勘違いも甚だしかった中学生の頃、仲良しになった女の子がいて、その子には自分でもよくわからないほのかな想いがあった。
その子には、彼氏がいるという噂があったけれど、昔から嫉妬という感情すら理解できていなかったので、何とも思わずに冗談を言い合っていた。だから、印象深く僕の記憶に残っていた。

中学卒業後、女っけのない社会に進んだことによって、さらに勘違いが進んでしまい、痛い少年となった僕に彼女ができるわけがなく、暗い日々の中、成人式を迎えた。

そして、綺麗になった彼女と再会し、心がときめいたが、痛い青年になってしまった僕は中学生の頃のように話しかけることもできず、軽く挨拶をし、「僕のこと覚えてる? 」という何とも情けない言葉を彼女に投げかけた。

すると彼女は、困った顔をして「・・・ごめん。覚えていない・・・。」と言った。

久しぶりに女の子に話しかけたのに、最初から躓いた僕は会話を続ける引き出しもなく、振られたような感覚に陥り「・・・そうかぁ。・・・じゃあ、また。」と言って、その場を立ち去った。
その後、うろたえながらしばらく同級生と話をしていたような記憶もあるが、むなしくなって華やかな会場を横目に見ながら後にした。

そして、どうして僕が覚えているのに彼女は覚えていないのかが納得できなかったので、自問自答し、愚かな青年だった僕は自分なりに落としどころを見つけた。

「きっと、彼女は高校時代、そして今の生活が中学生の頃より楽しいことが沢山あって、女の子は早く成長してゆくんだなと。」

そんな、想いが蘇ってきて、改めて言葉にしてみると、「え~。うけるし~ぃ。」と、言われた。

僕はすかさず「なにがおもしろいねん!! 」と、突っ込みを入れた後、あの頃に感じた胸の痛みを微かに感じながら、成人式の想い出をまた胸の奥にしまい、そっとふたを閉じた。


「私はシャルリ」は良いのだけれど・・・。

2015-01-14 19:06:05 | 日記
フランスで起こったテロ事件の報道を観ていて思ったことを少しだけ述べておこうと思います。

言論の自由が守られている事は、良いことだと思います。しかし、自由が守られているからといって、言葉や表現を闇雲に垂れ流すのではなく、用いる者が倫理観や道徳観を保っていなければ、本来の意味での言論の自由とはいいがたい。

仮に、新聞を売らねば生活が豊かにならないとか、私の名を世界に轟かせたいという、私的な欲望にかられ、より過激で刺激的な表現を公の場で発表したとするならば、それは表現者としての本質を見失っているように思う。

無神論者であるなら、神だろうと、仏だろうと、預言者であろうと、天使であろうと、自己崇拝者なのであるから、どんな表現を用いても心に痛みを感じないだろう。
しかし、表現者として自負しているならば、心のよりどころとしている人々が大勢いることを考え、表現を自らの意志で抑制せなばならない思う。また、信仰者であったなら、敵対する宗教を表現するのだとしても信仰者として、他者に対してどういう配慮をすべき熟慮すべきであろう。

思想家ならば、歴史を鑑み同じ過ちを繰り返さぬように表現し、先人よりも高い止揚を目指さなければならなぬであろう。

テロを引き起こしている人々は、紀元前から本気であって、その言論や行動は一貫してしているように思うので、ソフィストならば、同じ目線に立たず、どう対峙してゆくべきか考えなければならないと思う。

革命家であるなら、どんな悲惨な結果に終わろうとも、遠慮せずにやりたいことを貫けばよいが、これではテロリストと同質であるように思う。
表現者として表現することは大切であるが、そのことで隣人の命を奪われてしまっては本末転倒である。

しかし、こうも思う。歴史が動いてきた過程もこのような感じで始まっていったのではないだろうかと。

これ以上大きな争いにならないことを祈りたいと思う。

無題。

2015-01-12 19:43:47 | 日記
散歩していてふと思った。人は脳が劣化してゆくことに対してどうして考えてこなかったのだろうかと。今でこそ認知症とかアルツハイマー病という表現でその状態を表し、その原因や行動を改善してゆこうという動きがあるけれど、人類が地上に現れてから幾千年。もし、誰かがその問題について考えていたなら、その恩恵を受け取りさらに飛躍させることができていたはずなのに、医療的な事は時代が合わないとできないけれど、言動の傾向を読むことはまだ始まったばかりである。

科学や哲学は進歩し続けてきたのに、人そのものが以前のままでいられなくなる事をどうして考えなかったのでしょう。

昔は、循環器が脳の劣化よりも早く機能不全になる事のほうが多かったからだとは思うけれど、それでも、稀に長生きし認知症を患った人もいたのではないかと思う。

もしかすると、少数派であったが故に、考える対象にならなかったのか、もしくは、それは仕方のないことだと皆が受け入れていたことだったからかもしれない。
そう考えると、現在は少数派と多数派が逆転したことによって考えなければならない事案になったのだろうと思う。

だとすれば、「受け入れる」事より、「回避」する事を求められた理由は何であろうかという問題に突き当たってしまい、ため息をついた。

そこで、視点を変え、人が長寿を手に入れらるようになったのは、医学が進んだことと食物が十分取れていることと、大きな戦争が起こらない事が理由としてあげられるけれど、人そのものに、進歩、もしくは進化する性質が含まれているなら、長い年月をかけ、脳も進化するのではと考えた。

突然変異と自然淘汰から新たな脳が生まれる可能性があるかもしれない。しかし、疑問が残った。それは進化し続けた結果が現代人であるならという前提が必要となるからだ。
どうして人類が生まれたのかが明確に解明されていない以上、脳が独自の進化を遂げるという仮説も危ういものでしかない。

もし、仮に創造主が人類を創造したとしたならば、創造主によってアップロードされなければ、これ以上の進化は得られないということでもあるから、人の力で脳の寿命も延ばす事ができたとしても、個人やチームといった人の働きではなく、正確な創造主の業なのかもしれない。

と、考えているうちに散歩が終わってしまった。なんだか、かえって疲れてしまったな。(笑)

「the last naruto the movie」

2015-01-10 00:42:55 | 日記
昨年末に映画の割引チケットが手に入ったので、「The last naruto the movie」 を観てきました。
僕と「ナルト」との出会いは、今思えばとても印象的で、当時同じ職場に勤めていた高卒で入社してきた女の子が、好きな漫画はナルトだと言って、僕に見るようにと強く勧めたことがきっかけであった。
そこまで言うならと、早速レンタルをして一話から見てみると、「これは面白い!」となり、テレビ放送の方だけを見続けていた。彼女との出会いがなければ「ナルト」を観ることはなかったと思う。しかし、すっかりおじさんであった僕は長編漫画を観続ける根気などなく、自来也が亡くなったところでぱったりと観なくなってしまった。それ以来であるからキャラクターが成長していて驚きつつも感動してしまった。

アカデミー時代では少し痛い少女と思っていたひなたさんが美しく成長し、ナルト君とのラブストーリーを展開させてゆく姿はとても素敵で、シンプルに人を好きになる事、人を愛する事とはこういう事なんだと思い知らされた。
(映画を観終わった後、レンタルで、ひなたとペインとの戦いを観て思わず目頭が熱くなってしまった。)

しかし、残念ながら現実ではそういうケースは稀である。職場の主婦の人達の大半は割り切っていて、「旦那とはもう手もつながない。」と、いう意見が多数で現実の厳しさをひしひしと感じた。
でもです。孤独であったナルト君に人を愛する事を気づかせた日向ひなたさんの一途さは胸に響くのである。それに応えたナルト君もかっこいいのである。

所詮漫画だろうと思うなかれ、この映画のキャラクターたちはそれぞれの隣人愛を理想の形を示してくれているのである。

山中千尋に逢いたくて。

2015-01-05 20:13:07 | 日記
昨年末、アン・サリーさんのライヴの後、名古屋周辺のジャズライヴハウスを検索していたら思わぬ人のライヴが開かれる事を知った。

それは、ジャズピアニストの山中千尋さんである。

澤野工房時代からファンで、僕の部屋には最近まで彼女のポスターが(コルトレーンもね。)貼ってあったほどのファンある。女性ジャズピアニストと言えば、グラミー賞を受賞した上原ひろみさんの方がメディア露出も多いのでメジャーであるかもしれないが、彼女もまたすごい人なのである。

このチャンスを逃したらもう二度と会えないだろうなと(笑)思い、少ないこずかいをつぎ込みチケットを取った。

当日、田舎から2時間かけてライヴハウスに赴き、満員の客席の隅の方に座り、ロックを片手にCDで何度も聞いた彼女のピアノがライヴで聞ける嬉しさを噛みしめた。

ライヴが始まる。千尋さんが登場すると拍手が起こった。想像していたより小柄な女性であった。アン・サリーさんと同様のふんわりしたトークがとても印象的であった。しかし、ピアノの鍵盤に指が触れると、それまでの雰囲気を打ち破るドライブのきいたピアノの音に会場の人々が引きこんでゆく。 そしてベーシストとドラマーがそれにひっぱられ次第に音に熱が帯びてくる。
緩急のきいた演奏と、技巧的なソロ。これがプロなんだなと改めて思った。

そして、今回はブルーノートからCDをリリースすると聞いて驚く。ユニバーサルに移籍した時はすごく嬉しかったけれど、あの時と同じところに留まっている自分を帰り見て少し複雑な気持ちになった。

チケットはオール料金であったけれど、また2時間かけて帰らなくてはならない為、1ステージで早々に退席。それで十分満足だったけれど、帰りの電車の中で「あんなに素敵なジャズピアノを聴ける機会ってもうないんだろうなぁ」と、思い少し淋しくなった。




お正月に思う事。

2015-01-03 08:39:09 | 日記
認知症が進行して一人暮らしが困難になり入所してきた御婆ちゃんが、お正月である事を知ると、「(家族は)どうして、会いに来ないのか、なにをしているのか。」と、事あるごとに口に出し不穏になっていた。
家に帰りたくても帰れない、家族に会いたくても会いに来てくれない・・・。介護職に就いてから、修復が困難になった家族を見るたびに、これは因果なのだから仕方のない事だと思って思考を停止させた。しかし、いつも思考は誰かの犠牲の上に幸福を感じて良いのであろうかという問いを未消化のまま先送りするだけで、盆や正月が来るたび再燃する。だからといってどうする事も出来ないし、改めて綺麗事だけでは片づけられないのが世の常だと身にしみる。
他者を受容する寛容な優しさや思いやりが全ての人々に備わっているなら、怒りや憎しみや嫉みという感情は地上から消え去っているだろう。しかし、今なお内在し持て余す感情を私達はどうする事も出来ない。ただただ、奥歯を噛みしめ、湧きおこりそうな感情を飲み込むしかないのだと自分に言い聞かせ、何事もすぐに忘れてしまう御婆ちゃんに「明日は来ると思うよ。」と、ウソをついて取り留めのない話を傾聴して不安を和らげる事しかできないのであった。

あとがき。

2015-01-02 10:34:56 | 日記
新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

「巨神兵、東京に現る。」 僕のささやかな抵抗。 楽しんでいただけましたでしょうか。

短編映画の世界観からなるべく外れない世界観に留意して描いてみたのですが上手く描けていましたでしょうか。


明日から、また通常の日記に戻りますが、変わらぬお付き合いよろしくお願いします。

「巨神兵、東京に現る。」 僕のささやかな抵抗。 その19

2015-01-02 10:02:23 | 日記
すると、フロントタイヤがグンっと持ち上がった。それでも、スロットルは全開のままで、暴れるバイクを抑え込み、ギヤをチェンジし、フル加速で、キャンパスを駆け抜けた。後部座席に乗る彼女は予想しえない動きに驚いて「きゃっ! 」と、言って、両腕を僕の身体に回した。その時、背中に柔らかな胸のふくらみと鼓動とぬくもりが伝わってきた。

それは夢のようだったけど、二人乗りのライディングは思ったより難しいし、タンデム走行を楽しもうという余裕もなかった。

「彼女を護らねば! 」

と、自分に言い聞かせ、いち早く都心から離れるなら高速に乗るしかないと思った僕は、渋滞気味で流れの悪い山下通りを南下し、都市高速環状線に上がった。

しばらく行くと、港区方面の空に、SF映画やアニメでしか見られないような、この世のものとは思えないフォルムをした怪物が光の翼を広げて浮かんでいるのが見えた。周りの車のドライバーもその光景に驚いていた。

僕は走行ラインを側道へ移し、車の横を突っ切って中央高速へと進路をとると、彼女が大きな声で「どこへ行くの!!」と、言った。

「わからない! とにかく、東京を離れる! 」

僕は、そう叫ぶと、彼女は、

「うん!君にまかせる!!」

と言って、僕を信じてくれた。

初めての中央高速を全開で下ってゆく。ただひたすら都心から離れる事だけを考えていた。スピードメーターがずっと振り切れている。どのあたりを走っているのかはまったくわからないけれど、前方に高い山が見えるから、都心からはかなり離れることは出来ただろうと、安心した僕は、

「怪物は今どうなってる!?」

と、彼女に聞いた次の瞬間、耳をつんざくような音と共に、周りの景色が真っ白になった。

「なに!! なに!!」

後ろで彼女が叫ぶ。ミラーを見ると遠くの街が真っ赤に燃えあがっていた。僕らの走ってきた道も黒い煙に覆われて寸断されていた。
訳が分からない。不安が心を支配してゆく。ハンドルを持つ手も震えている。体と心の変化を感じていると、僕らを爆風が襲ってきた。

「きゃぁあああああ!」

波動が伝わり、大型地震のように激しく足元が揺らぐ。景色が歪んでみえる。直進する事もままならないバイクを必死にコントロールし、なんとか路肩に停止させると、僕らの頭上を戦闘機の編隊がすっ飛んでいった。終わりの始まりを始めた「使者」を止める為なんだろうけれど・・・・・・。

背中で彼女が泣いている。クールで預言者と呼ばれていても普通の女の子だ。彼女が抱いていた不安や辛い気持ちはどれほどだったろうか。僕は振り返り、彼女が大丈夫か確かめた。

「・・・大丈夫だった? 怪我ない? 」

「・・・うん。大丈夫だよ。」

「・・・じゃあ、行くね。」

「・・・うん。」

それ以上、掛ける言葉が見つからない。僕は再びバイクを走らせ始めると、彼女は僕にぴったりと抱きつき、ヘルメット越しに、

「・・・私も君の事が好きだったんだよ。入学式の時、大勢の人の中で、あなたを見つけた時からずっと。」

と、言った。

難攻不落であった理由が僕だったことに驚いたけれど、こんな状況では返す言葉が見つからなかった。

黒煙が立ち昇り、炎と化した東京が次第に遠ざかって行く・・・。みんな無事だろうか。

神の計画の前に無力な僕達はいったい何者であったのだろうか。何者かもわからない僕達は何処へ向かえばよいのだろうか。滅びが定められたものであるなら、人類が長い年月を掛けて築き上げてきた世界は幻想でしかなく、滅び去った世界こそが真に調和した秩序ある美しい世界といえるのかもしれない。しかし、神の創造物である僕達の魂から湧きおこった、生きようという気持ちも神の御業ならば、その御業にこの身をゆだね、彼女と共に滅びの日まで懸命に生きてやろうと思った。

                                         完

「巨神兵、東京に現る。」 僕のささやかな抵抗。 その18

2015-01-01 13:23:23 | 日記
駐輪所に辿り着くと、肩に掛けたリュックからバイトで使うツナギのユニホームを取り出し、

「これを着て。」

と、無造作に差し出た。すると、彼女はうろたえながら、

「ええっ。此処で着替えるの!!」

と、拒否反応を起こした。

「そんなわけないじゃん! その上から着て! 」

少し焦っていた僕は、思わず少し強い口調で言い放ってしまったが、それがよかったのか、強気だった彼女が、急にしおらしくなって、

「えっ・・・。スカートの上から履くの? 」

と、しょぼんとしながらつなぎを観た。クールなイメージからは想像できないくらいの愚図愚図ぶりを見て嬉しくなったけれど、事態は急を要している。

「いいから早く!  」

「わかったわよ。 」

そう言って、彼女がぎごちなさそうにつなぎを足を入れている間に、僕は駐輪場の隅に放置された埃まみれのバイクに駆け寄って、バイクと共に残されたヘルメットを拝借した。

被ってみると、埃っぽい。けど、贅沢は言ってられない。シールドを上げ、振り返ると、彼女はまだ、スカートをたくし上げてつなぎに足を通しているところだった。

細い脚から見える下着。彼女と目が合う。すると、すかさず、

「あっ。今見たでしょ!下着見たでしょ! 」

と、叫んだ。

「見てない!見てない! ほら早く! 」

うやむやにするわけではないが、なんとなくごまかしてしまった。それよりも、急がなければ。

僕は彼女に駆けより、足元で、もたついている、つなぎを少し強引に引っ張り上げて、彼女の腕を袖に通した。すると、だぼだぼの袖を広げて、

「なんなのこの服。ゴワゴワして着心地悪くて仕方がないわ。」

と、ぼやいた。

「文句言うんじゃありません。ほら。こっち向いて。ジッパーをあげるから。」

信じられないくらい大胆になっている僕は、ためらいなく彼女の肩に手を置いて、僕の方に振り向かせると、ダボダボのつなぎのジッパーを首まで上げた。

「これで良し! 」

そう言うと、彼女は

「君、本当は私の下着観たでしょ? 」と問い詰めてきた。

少しめんどくさくなった僕は、「パンツなんか見てもなんとも思いません! 」

と、ぶっきらぼうに答えると、

「あなた!それはそれで、失礼よ!! 」

と、赤面してむきなった。

誰も知らない彼女の表情が露わになってゆく。僕だけしか知らない彼女がここにいる。僕はとてもうれしかった。なんて言っている場合じゃない!

「これ持って! 」

と言ってリュック渡すと、彼女はとっさに自分のカバンを無理やり僕のリュックに押し込め背中に背負った。

見慣れないつなぎ姿の彼女。一緒にバイト出来たら楽しいだろうなと思いながら、彼女にヘルメットを渡すと、ぎこちなさそうに髪を後ろに流し僕のヘルメットをかぶった。

バイクのセルを回すと一発で4サイクル単気筒のエンジンに火が入る。僕はシートにまたがり、

「乗って!」

と言うと、彼女は勢いよく車高の高いトレールバイクの後ろに飛び乗った。でもすぐに僕の背中をたたいて、

「足!足! 足はどこに載せるの! 」

と、足の置き場を聞いてきたから、僕は折畳まれた小さなステップを指差して、「それを倒して! 」と叫んだ。

「わかった! 」

呑み込みの早い彼女はそう言うと、長い脚でステップを倒し

「いいよ! 」

と言って、僕の背中を一つ、バンッと叩いた。気合いが入った僕は、

「しっかりつかまってて! いくよ!!」

と叫んで、スロットルを全開にしてクラッチをつないだ。