今日一日だけ生きてみよう

卯月タラの日々のつぶやき

すごく昔のことを思い出しました。

2013-10-16 14:22:46 | タラの日記

漫画家・絵本作家のやなせたかしさんが亡くなられたことを、昨日、ヤフーのニュースで知りました。
ご高齢だしいつかはこういう日がと思ってはいたけれど、「心にぽっかり穴があいたようだね」と、子どもたちも言っています。
心よりご冥福をお祈りいたします。

やなせさんから、お葉書をいただいたことがあります。もう40年近く前のことですが。

やなせさん編集の雑誌「詩とメルヘン」が大好きだった私は、その世界にあこがれて、将来こういうものを書く人になりたいと思っていました。
高校2年の夏休み、学校の職員室の印刷機を借りて、自分の書き溜めた童話のような物語を本(ガリ版刷りの文集のような感じです)にしました。
40部ほど刷ったと思います。それを、いろんな人に配ったのですが、一番にお送りしたのがやなせさんでした。どうしても、私の作品を読んでいただきたくて、「詩とメルヘン」の編集部経由でやなせさんに送ったのです。
しばらくたって、ある日、やなせさんの描いたイラストがプリントされた絵葉書が届きました。
そこに、やなせさん直筆のメッセージが書かれていました。

「ご本、拝見しました。あなたはとても頭のいい少女だと思います。童話作家などというつまらないものを目指すのではなく、たくさん勉強して、キュリー夫人のようになってください」

そこにはそう書かれていて、私は頭をなぐられたようなショックを受けました。

両親や学校の先生、いろんな人に私はその葉書を見せて、「これってどういう意味だと思う? 才能がないからあきらめなさいってことだと思う?」と聞いて回りました。みんな「さあ?」と首をかしげました。

頭がいいなどという言葉がほしかったのじゃない。
童話作家をつまらないものだなんて、やなせさんに言ってほしくない。

お返事がいただけた喜びよりも、もやっとした怒りに近い思いが私の中に湧き起こり、「認めてもらえなかった」という悲しみとともにそれは私の胸の中に長く残りました。
いつかちゃんとした物書きになって、やなせさんと再会し、「私はあの時にお葉書をいただいた少女です」と言いたい。
そんなふうに思い、それから私は同人誌などに参加しながらいろいろな物語を書いていきました。

同人誌で知り合った夫と結婚し、子どもを持ってからは何かと忙しくなって、物書きになる夢は遠ざかり、私は童話作家にもキュリー夫人にもなれずにここまで来てしまいました。
今となっては懐かしい思い出ですが、今でもあのお葉書の意味はわからないままです。

長々書いてしまいましたが、やなせさんの思い出です。
子どもたちにとっては「アンパンマン」の作者さんですが、私にとっては、かつての夢の世界の人でした。
もうお会いすることもできないのですね。残念です。

合掌。

コメント
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