美術の学芸ノート

中村彝などを中心に近代日本美術、印象派などの西洋美術の他、独言やメモなど。

中村彝アトリエ内部写真と茨城県近代美術館蔵「静物」(大正8年作)

2015-08-07 21:45:58 | 中村彝
『芸術の無限感』(新装普及版)に載っている彝のアトリエ内部写真は、その写真の左辺部が実は少しトリミングされている。

それでそのトリミングされていない写真を見ると、写真の中に写っている、現在は茨城県近代美術館にある「静物」(大正8年作)のモティーフそのものが、描かれたテーブル(の脚)とともに、そのまま、ほぼ同じ構図で写真の中に写っていることに気づかされる。

だから、この写真を見ると、一見、似たような作品が2枚描かれたのかと思われるほどである。だがそうではなさそうだ。(下図)



彝は、この写真を撮るのに、わざわざこんな仕掛けをして撮らせたのか。

そうだとすると、「落合のアトリエ」も、わざわざ引っ張り出して、狭いテーブルに置いた可能性もあるやも知れぬ。そんな思いにも囚われる。

アトリエの内と外がこれで揃うからだ。
まあ、それにしては、この小さな作品の図柄を認めるのにちょっと骨が折れるが。

アトリエの壁に貼られた裸体像がルノワールでなく、ドガのパステル画であることは、下図により信じて貰えるだろう。確かプーシキン美術館にあるドガである。
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中村彝のアトリエ内部写真と横須賀美術館の「落合のアトリエ」

2015-08-07 12:58:49 | 中村彝
前にも論じた『芸術の無限感』掲載の彝アトリエの内部を撮った写真、そこに写っている小さな「弓なりになっている?板絵」について。(※ただし、支持体について、所蔵館はキャンバス・ボードと表記しています。)

この作品は、推量でなく、やはり、現在、横須賀美術館にある「落合のアトリエ」(下図)と断定したい。
これが今回第一に言いたいこと。


で、この作品の制作年は、同館では大正5年としているが、これは再調査が必要なのではないか。これが第二点。

この写真(下図)は、大正6年に撮られた可能性は極めて低く、大正7年11月16日以降、おそらくは大正8年以降に撮られたものと思われることは、先に論じたとおりだ。


そうすると、大正5年に描いた小さな作品を、この写真を撮るために、わざわざ狭いテーブルの上に置いたというのは、少し不自然な感じがする。

この写真に写っている作品は、やはり大正8年前後に、何らかの意味でまだ彝が手を入れていたものではないのか。

そう思って、写真を再び見ると、これは人によって意見が分かれるかもしれないが、この小さな作品の一部がまだ未完成に見えるようなところもないではない。

もし未完成な部分が他の人によっても認められるなら、この作品の制作年は大正5年から大正8年までのいずれかの時期に描かれていたものと考えた方がよいだろう。

それに、この作品は、平成27年7月5日のこのブログ記事でも明らかにしたように、目をよくよく凝らしてみると、画面右方底辺部に、制作年と署名が僅かに残っているような痕跡が明らかに確認されるのだ(下図)。


これは、ひょっとすると赤外線写真、あるいは紫外線写真によって、その消えそうな部分を明らかにできる可能性がある。

所蔵館にぜひとも再調査してほしい。

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