美術の学芸ノート

中村彝などを中心に近代日本美術、印象派などの西洋美術の他、独言やメモなど。

ピサロ2点(茨城県近代美術館蔵)の関連作品はメットにある!

2015-09-01 11:16:57 | 西洋美術

茨城県近代美術館に油彩の風景画1点(「グラット=コックの丘からの眺め、ポントワーズ」)とパステルの人物画1点(「農家の娘」)、計2点のピサロの絵画がある。

地元の美術館に詳しい方なら、よく知られているかもしれない。
だが、この2点の関連作品がいずれもニューヨークの有名なメトロポリタン美術館(通称メット)にあると言ったら「えっ、ほんとう?そうなの!」と素直に驚いてくれる人もあろう。

また、それによっていっそう興味を持ってくれる人もいようし、そこからさらに作品への見方や評価を改めてくれる人も出て来るかもしれない。

さて、メットにおける前者の関連作品とはグルーエットの丘、ポントワーズ付近である。(その他、メット以外にも、この作品の関連作品は複数ある。)

また、後者の関連作品は二人の若い農婦である。

これは、ピサロのエラニーの家近くの風景を背景にして描いた明るい作品である。二人の農家の女性を大きく、力強く画面前景に据えた構図は、その背景とともに、まさに彼の芸術的=思想的信条を直接伝えるものとなっている。
茨城の作品は、その二人の農婦のうちの左側の女性であることは、このリンク画像によって明らかだろう。

ところで、メットの「グルーエットの丘、ポントワーズ付近」の制作年は、1878年の春頃と推定されている。一方、茨城の油彩画には1878年の年記がある。

茨城の作品もかつては「グルーエットの丘からの眺め、ポントワーズ」と題されていたが、外国の「最新の研究成果」に従って改題された。

グラット=コックとグルーエットの丘では、おそらく今では地元の人でも区別がつかない程度の違いでしかないが、数十メートル、もっと離れていても数百メートル程度の範囲での違いでしかないが、それでも作品名は改題された。

メットの「二人の若い農婦」は、同館の解説によれば、1891年の夏に始まり1892年の1月半ばに完成した。
一方茨城県のパステル画は1892年の制作年となっている。

もし茨城のこの作品がメットの作品の予備的習作とすれば(明らかにそのように思われるが)、制作年の再考も、タイトル改題と同様に非常に大事なものであるから、必要になってくるかもしれない。

(追記)同館が無料で配っている「グラット=コックの丘からの眺め、ポントワーズ」のカードでは、制作年が「1878年頃」となっているものがある。が、これは年記があるのだから1878年としてよいはずだ。

メットのこの関連作品にはかつて偽の署名が画面右下に記されていた。それは消されたが、そういうものでない限り、茨城の作品は1878年作でよいと思う。

コメント (2)
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