美術の学芸ノート

中村彝などを中心に近代日本美術、印象派などの西洋美術の他、独言やメモなど。

『平気でうそをつく人たち』を読む(5) 私のメモ

2015-09-09 14:26:10 | 個人的なメモ
17世紀の後半、ガリレオ事件が科学と宗教いずれにとっても有害なものだとされて以来、科学と宗教は、互いにかかわりを持たないという不文律の社会契約を結んできた。宗教は、自然界は科学の領域であることを認め、科学は精神的なもの、価値観とかかわりあうものから身を引くことに同意したのだ。p52

悪の問題は宗教的思索家が管理すべきものとされた。p52

フロムの言う屍姦症的性格の人間とは、他人を支配したいという人間の欲望、他人を支配可能なものにし、その人間の他者依存性を助長し、自分自身で考える能力を弱め、その人間の独自性および独創性を減じ、その人間を制御可能な状態に抑え込んでおきたいという欲望をもつ人間のことである。p56

このタイプの人間は、生の姿の多様性と個人のユニーク性を尊重し、これを育成する人間のタイプとは反対。p56

悪の心理学は治療のための心理学でなければならない。p57

真実に対する愛のみならず、生命に対する愛、温かさと光と笑い、自発性と楽しさ、奉仕と人間に対する心遣い…p58

自分たちの学んできた教訓を神話の中に取り入れてきた。神話の実体はそうした教訓の膨大な貯蔵庫であり、今もその中身を増やしつつある。p58

J.R.R.トールキンの『ホビットの冒険』や『指輪物語』のゴラムの性格。p58

私の経験によれば真に邪悪な人間はごくありふれた人間であり、通常は表面的に観察する限り普通の人間のように見えるものである。p59

自分の親しくしていた人が自殺するようなことがあれば、その最初のショックに続いてわれわれに生じる反応はその自殺した人に自分が何か悪いことをしたのではないかと不安になることである。p82

人間というものは、互いに相手に対して何らかの感情を抱くものである。心理療法家が患者に対して抱く感情は「反対転移」と呼ばれている。p89

彼は自分に生じた「反対転移」が適切なものかどうか見きわめなければならない。p89

健全な人間が邪悪な人間との関係において経験することが多い感情が嫌悪感である。p90

この嫌悪感はほぼ即時に生じるものである。p90

この種のネガティーブな反応はどちらかと言えば心理療法家の自己像を脅かすものとなる。p91

邪悪性を精神病の一形態として規定できないか…これを科学的研究の対象にすべきではないかp92

   + + + +

以上で標記の本からのメモを終える。
この本の筆者は精神科医、心理療法カウンセラーでクリスチャン。(43歳の時、無教派の洗礼を受けている。p6)
自分の療法がしばしば効果を上げなかったかもしれないと、本の中で時折語っていることも印象に残った。

コメント
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