前日から降り続いていた雨も夕方には何とかやんだ。雨粒で押さえられていた甘い香りがまた漂い始める。予算の都合で何ばかりも進まない日が多いが、それでも竹取庵の工事は、はっきりと決まっていない完成形に向けて少しずつ進んでいる。
丸鋸で材料を切りながら、僕はふと古代エジプトの王ファラオを思った。ファラオはその位に就くと同時に自分のピラミッドを思い描き、死期の近づく遥か前から建設にかかったと言う。それは、ピラミッドが単に王の墓ではなく、むしろ大きな目標だったことを示している。
竹取庵は僕のピラミッド。どこかに僕の遺骨を納める場所を作ろうか、みんな迷惑するだろうな。それに僕には国民も奴隷も居ない。ひとりだ。そこまで思い至って苦笑する。
みかんの丘は夕凪。風の止まった丘で、香りがいっそう強くなる。明日は晴れるだろうか。
丸鋸で材料を切りながら、僕はふと古代エジプトの王ファラオを思った。ファラオはその位に就くと同時に自分のピラミッドを思い描き、死期の近づく遥か前から建設にかかったと言う。それは、ピラミッドが単に王の墓ではなく、むしろ大きな目標だったことを示している。
竹取庵は僕のピラミッド。どこかに僕の遺骨を納める場所を作ろうか、みんな迷惑するだろうな。それに僕には国民も奴隷も居ない。ひとりだ。そこまで思い至って苦笑する。
みかんの丘は夕凪。風の止まった丘で、香りがいっそう強くなる。明日は晴れるだろうか。