夕暮れ時、西のほうから分厚い雲が押し寄せて来た。まあいつもの事だ。今夜は晴れる。きっと晴れる。自分にそう言い聞かせて観測デッキに上がり、久々に45センチを固定していたひもを解く。なんと、斜鏡が完全に曇っていた。下向きなのに。しまった、再メッキが必要かも。そう思いながら薄い洗剤を浸したティッシュと水道水で濡らしたティッシュで用心深く拭いてみる。幸い曇りは梅雨の湿気で埃が分厚くこびりついていただけだった。一安心。主鏡の方はアクリルカバーのお陰でなんともない。
よし、久々。本当に久々に竹取庵の屋根を開く。夜にこうして屋根を開くのはなんと2月以来実に5カ月ぶりだった。少し不安だった空も…
見ろ!ちゃんと晴れてる。これでこそ梅雨明けだ。西と南に低く雲は見えるが、そのほかの場所は晴れている。透明度も高く、月の周囲でさえかなりの星が数えられた。トップリングにカメラを取り付け、筒先を八日月へ。まもなく取り付けたカメラのモニターに、地球の大気を感じさせない月面が浮かび上がった。