寝坊してはもったいない。昨夜見た気圧配置がそう教えてくれていた。午前3時にセットした携帯の目覚ましで目を醒まし、用意しておいたカメラバッグを手に車に乗る。みかんの丘に着いたのは4時過ぎだった。
車から出て息を呑む。雲一つ無い空に冬の星座と春の星座が同居していた。少し西を冬の天の川が下っている。満天に散りばめられた星屑のイルミネーション。それは人が作ったどんな電飾よりも美しく、自然だ。
茫然と眺めているうちに涙がにじむ。やがて我に返って竹取庵の鍵を開けた。ここで時間を食っている暇は無い。今日は二つのほうき星を捉えに来たのだ。観測デッキに上がって屋根を開け、赤道儀に火を入れた。