職場や家の事情で長い間丘に上がることができなかった。またもし上がれたとしてもスズメバチのアナフィラキシーアレルギーで危険な状態を作りたくなかった。
でもそのおかげで増築中の寝室は作業が中断、観測デッキは屋根の妻を開けたまま近づけなかったためにまるで廃屋のような荒れ方になってしまった。
でもまあ、ここまで来れば腹が座る。一からやり直すつもりで、とりあえず観測デッキから手を付けることにした。まずやらなければならないのはこのデッキの密閉作業だ。
竹取庵の観測デッキはスライディングルーフと言って屋根が水平に移動する。しかも、その屋根が竹取庵は大小二段。このため屋根と建物の壁にはトンビでも入れるような広い隙間ができた。渡り鳥に毎年安全なねぐらを提供し、スズメバチやミカンの害虫にも越冬場所や快適な居住スペースを与えてしまっている。ただ、屋根の大きな隙間は最初からだ。そしてスズメバチや害虫が巣を作り始めたのはここ数年のこと。
なぜだろう。ずっと疑問に思っていたのだが、つい先日ふと思い当たった。壁面の木材の防虫防腐剤の効果が薄れているんだ。増築部分でも外壁にクレオソートを塗って7年、それ以外の部分は15年以上経っている。そうだ。作り続けていても、先に作ったところにメンテナンスが要るのは当たり前のことだった。
というわけで今日は錆が出ているスライディングルーフの鉄骨部分の防錆処理から入ることにした。
錆止め塗料も最近は先に錆落としをしなくてもいいものが出ている。便利が良い。そう思いながら作業に入った。ただこれが結構手間がいる。作るときにはあらかじめ錆止め塗料を吹き付けた鉄骨を組み上げて、その上に木の板を張っていったのだが、錆止めは一体化した鉄の部分にだけ塗らなくてはならない。仕方が無い。以前ここに書いた言葉を思い出す。「少しずつ、少しずつ。時間が掛かっても後ずさりはしない。後ずさりしなければいつか前に進んでいる。」
そう、歩みを止めていた竹取庵は、また前に向けて進みだした。電池が切れて長い間止まっていた居間のフクロウ時計も今時を刻んでいる。
今日は暖かい。竹取庵の前の枝垂れ桜も、心なしかつぼみが動いている。春が近いのかな。
観測デッキの錆止めが何ばかりも進まないうちに日が暮れてきた。西の空に薄雲が広がってきている。今日は減光しているというオリオン座のベテルギウスを撮ろうと思っていたのだが、これでは無理だ。明日も休み。続きは明日にしよう。明日は天気が悪いという。作業は室内だけかな。