空は次第に色を濃くしてゆく。それと共に頭の真上で天の川が鮮やかになって行った。光の川面に大鳥が遊び、両岸では恋人たちが、七夕の会合を終えてそれぞれの仕事に勤しんでいる。川下のさそりは黄昏のベールに身を隠していたが、それを追う射手は、姿無き獲物をちゃんと捉えて矢を番えている。
ああ、素晴らしい眺め。ほんとうに素晴らしい眺め。棒状渦巻という中途半端な形をした天の川銀河の辺境に居て、僕は今その姿を渦の中から見ている。この空の中に星は一体いくつあるんだろう。その星を回る惑星はどれほど有るんだろう。そしてそこにはどれだけの数の命が暮らしているんだろう。
僕らの天の川銀河はやがて、お隣りで堂々とした姿を見せている渦巻銀河アンドロメダと衝突するそうだ。その時この眺めはどんなふうに変わるんだろう。見てみたい。写真に撮ってみたい。その時まであと50億年。え、50億年と言えば、太陽の寿命が尽きるのもその頃だ。太陽は命のともし火が消える前に、大きく膨らんで地球を飲み込むという。その前にアンドロメダとぶつかれば、星同士の衝突は起こらなくても、すさまじい引力が巻き起こす潮汐作用や新たな星の誕生で、地球など吹き飛んでしまうだろう。いずれにしてもこの丘も竹取庵も無事には終わらない。
空のあちこちを飛行機が飛び交う。実はこの写真、午後7時20分から撮り始めたのだが、写した写真の中に光の航跡を見つけては撮り直し、あげく、午後8時前にこの写真で諦めることにした。この写真もわし座の中をはじめ3箇所に、細い光の筋や点滅光がある。自分が乗る時は窓から夜景を楽しむ飛行機も、夜空を撮影するほうに回ると飛んだ邪魔者めと勝手なことを思う。
50億年後、ちーさんはきっと見られる。でも、写真は諦めなくては。
航跡、あるんですね。
時間をかけて、じっくり探してみます。