空の透明度はそれほど良くなかった。それでも星雲や星団が撮れないほどでは無い。今夜は頑張ろう。そう思って竹取庵の屋根を開けた。西の空に綺麗な三日月が掛かっていたが、その向こう。西から北に掛けて嫌な雲が姿を見せていた。まさか。あれが来るのかな。そう思いながらカメラを8センチに取り付けて月に向ける。肉眼では晴れて見える空も、望遠鏡を通すとうす雲が広がっているのが分かる。ピントと露出を決めているうちにそれが次第に濃くなった。
やっぱり来たか。そう思いながらシャッターを切る。この時点の月齢は3.2。「細月」よりは少し太っている。雲のほとんどない写真も何枚か撮れたが、たなびく薄雲の向こうの三日月も面白い。なんだか物語に出て来そうな情景だ。
などと悦に入っているうちに、雲はどんどん迫って、晴れの区域を縮めていった。