西から迫る雲は次第に厚みを増していった。ははは、やっぱり僕はくじ運が悪い。今日狙うはずだったおおぐま座の天体は厚い雲の向こうに隠れてしまっている。僅かな期待を持ちながら西の彼方を眺めたが、そこに写真の撮れる晴れの領域は有りそうになかった。まあいいか。たとえ星が撮れなくても、観測デッキで星空を見上げる事が出来た。満タンとはいかないが、心がチャージされてゆくのが感じられる。
頭の上を夏の名残りの天の川が流れていた。羽を広げるおおとり。ここに今日の次のターゲットが有ったが、無理だろう。でもいい。出会えたのだから。 そうだ、せっかく赤道儀に火を入れているのだし、今夜はこの鳥を撮って終わりにしよう。魚眼を付けた小さいほうのカメラをピギーバックの雲台から外し、8センチにつけていた大きいほうのカメラと取り換えた。カメラ感度を1600に設定。焦点距離28ミリ、絞り解放の5.6。雲が本当にすぐそこに来ている。ファインダーを覗いてフレームを決める暇が無い。あてずっぽうで筒先を夏の大三角に向けてシャッターを開いた。
視野の端を小さな人工衛星が渡ってゆく。雲はもうそこまで来ていた。露出85秒。それが限界。短い露出だが天の川と白鳥が分かるだろうか。大三角のうち、織り姫星はあと少しで外れてしまった。次のショットを撮る間もなく雲が流れて、天の川は埋もれていった。
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