昼行灯(だった)トキの大雑把なひとりごと

クレヨンしんちゃんよりもユルく生きていた(当面過去系)私の備忘録と、大雑把なひとりごと。時々細かく語ることも。

シナリオ編

2007-01-11 00:35:32 | ものおもい
 では、前々回の続き。
 実は私は、言われている程に企業の海外逃散が起こるとは思えないのです。きょうちらほらと、あちこちのブログを見ましたが、同様な意見も散見されます。
 実際には、前々回も述べた様に、安価な労働力を求めた海外移転は、それなりの初期投資及び日本国内ではあまり考慮しなくてよい教育水準の差分を埋めるための費用がかかります。それらをどれだけの期間内に回収出来るかがミソで、それには、国内外の労働単価の格差×稼働年数、及びこの企業戦略を市場がどう評価するか(すなわち増資による回収がどの程度可能か)の、大きくは2つの要素が関係するでしょう。
 この辺になると、現実には多くの仮定を含む複雑な推論が必要で、どこまで経営予測が立てられるかはわかりません(私には)。
 とはいえ、ここでは、財界諸氏の主張に則り、「高い労働コストは企業の海外移転を促進する」という前提で話を進めます。

 まず、最悪なケースを考えます。仮に「クラッシュモデル」としましょうか。
 この場合、企業はいずれ有利な海外に生産拠点を移してしまいます。それは「生産コストが低くて有利」か、「販売価格が高値となり有利」かのどちらかです。
 日本では何が起こるかというと、まず人件費はどんどん下がります。にもかかわらず、日本の人件費よりも安く上げられる地域があるうちは、企業はどんどん海外に逃散します。(まあ、取引の安全性とか、治安とかの変動要素も大きいでしょうが)
 そして、移転した先では労働市場が活気づき、超長期的には人件費が上昇します。
 ごくシンプルに、古典的にいうと、日本で下がった人件費と、海外で上がった人件費とが均衡したところで、企業の海外逃散が治まります。
 ただし、このとき、日本国内の購買力は下がっているでしょう。そのため、もし、同一価格でより多く売れる、或いはより高価格で売れる地域が他所にあるなら、企業の生産拠点はやはりそちらにシフトします。輸送コストがかからないからです。
 ここで想定されるのは中国やインドの富裕層等です。そのようにして、国内ではもはや収益を上げる企業もなく、労働単価もジリ貧下げ止まり又は底なし、という悲惨な状態が現出します。
 そして物価ですが、例えば現政財界人がモデルにしている米国は、農業国で食料にかかるコストはかなり低い。一方、日本はそもそも土地が少ないため、1億2000万人を養う食を国内だけで作るのは至難の業です。つまり、食料価格はかなり下がりにくい(下方硬直性なんて習いましたねその昔)。そのため、どうしても物価全体が十分下がらず、貧困の度合いはいっそう悪くなるでしょう。(食料を輸入すればどうかという話もあるが、そもそも国内総生産が足りないので日本から売るモノがなく、輸入での食料調達コスト低下にも限度がある、又は低下できない)
 こうして、企業と経営者だけはまんまと美味しいところをかっさらって日本からバイバイ、後には国富が食いつぶされた焼け野原と、貧困にあえぐ下層国民だけが残る。これがクラッシュモデル。ちなみにこの場合、企業は愛国心ゼロ。御手洗会長は何と言うでしょうか。
 より緩やかなシナリオは、「ハードランディングモデル」。といっても、実際には上記モデルの「賃金の内外格差」が埋まるのがより早いだけ。企業の海外逃散は続くが、周辺諸国の経済成長が早いため、日本国内の物価水準と、賃金水準との格差が上記程生じないというもの。しかしいずれにせよ、格差の固定化と日本のビンボー化が進んでしまう。
 さらに周辺各国の経済成長と賃金上昇の足が速ければ「ソフトランディングモデル」になれるかもしれない。この場合、海外に拠点をシフトして初期投資をするより、日本国内で生産を増大させた方が稼ぎが大きくなる。無論教育水準とかの要素も均衡する。こうなれば、とりあえず企業の海外逃散は止まる。賃金もある程度の水準で下げ止まるから、生活困窮度は前のシナリオほど酷くはならない。

 さて、ここまで論じてきて気付くのですが、上記は基本的に製造業のモデルです。トヨタとかね。
 例えばイオン等の流通・販売業の場合は、そもそも「海外逃散」モデルが当てはまらない。なぜなら、彼らの顧客は普通、海外になりえない(商社なら別だが)。もし海外進出するとしたら、ウォルマートが西友を買ったように企業買収になる。それは基本的に同一国内での流通販売のビジネスであって、企業自体の移転ということではありません。
 例で挙げたスーパーといった商売が増収増益となるためには、とどのつまり内需拡大しかない。なので、こういった業種がキャノンなりトヨタなりの唱える海外逃散前提のビジネスモデルをどう軌道修正できるかが、今後の一つの鍵である気がします。
 以前、イオンがいち早く定年の5年延長を決めましたが、おそらくは上記のことが念頭にあるのでしょう。製造業がやらないなら、自分達がやるしかないのですから。
 
 ついでに言うと、内需喚起によるしかない企業のほかに、国内の景気のカギを握るのは、上でも書いたように食糧でしょう。
 いまは好みや変な衛生指向のようなものが強く影響し過ぎていますが、輸送コストや傷みの問題から、食糧の輸入依存は一定のブレーキがかからざるを得ない。これにより、食糧価格が高止まりになりやすいことが、ある意味内需を引っ張るのではないかとも思えます。
 ただし、高価格は実質貧困率の上昇に繋がるので、これも均衡点がどこになるかで難しい面があります。
 あとは教育。あまりにも貧困化が進むと、現在の教育水準すら維持出来ない。そうすると、雇用者側からは魅力のない労働市場になるので、よけい海外移転が加速してしまいます。これも、貧困化と労働単価下落がどこまで続き、どこまでで止まるのかに関わってくるでしょう。クラッシュモデルなら、無論「手遅れなレベルに下がる」ことになるでしょうね。
(ここで一旦UPしますが、後日見直して改稿予定です)
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