松原みき「真夜中のドア」が世界でブームになり、東日本大震災前にあった70年代歌謡曲リバイバルブームから遅れること十数年、ようやく80年代日本音楽が再評価される時代になった。
シティポップはシュガーベイブ/山下達郎系列(例えばEPO「DOWNTOWN」)で語られることも多いが、私的には林哲司系を強く推したい。(他に南佳孝や大沢誉志幸などを入れてもいいだろう)
林哲司はバップレコード系の曲を多く手がけており、典型的には杉山清貴&オメガトライブが浮かぶ。また同時期の菊池桃子のプロデュースを行なっていたことも押さえておきたい(あの「ラ・ムー」は、頓挫したジャッキー・リン&パラヴィオンの後始末の意味合いもあった。なおStrenger‘s dreamも名曲)。
90年代、大学生の私は同期と共にカラオケに行って遊んでいた。当時好きだった子に「そうねー、杉山清貴とかも歌えるけど」というと「あー嫌い」という反応。宜なるかな、バンドブームの最中にシティポップはダサさの象徴であった。ようやく今になり正面から好きと言える。
古くは岩崎宏美や太田裕美に遡る半分アイドル系実力派女性シンガーがシティポップを支えていた。杏里は林哲司系、竹内まりやはモロ達郎系のシティポップシンガーと言っていいだろう。渡辺美里は個人的にはロック寄りにシフトした後継者だと思っている。他方、森川美穂はアイドルデビューという点で岩崎宏美や太田裕美系ながら、出身も含めゴッド姉ちゃんを継ぐ独特のアイドル歌謡/90年代シンガーの地位を築く。
80年代歌謡の中で、新川博アレンジに注目したい。個人的には川越美和「ココロの鍵」のアレンジャーとして切なく儚い情感を込めたそのアレンジがとても気に入っている。検索したら同系と言っていい小川範子「無実の罪」「ひとみしりangel」、北岡夢子「告白」などアイドルポップスの名曲を多く手がけている。他にも富田靖子「元気ですか?」や、それこそシティポップなら1986オメガトライブの数々の曲、情感系でない方向では中原めいこ「君たちキウイ、パパイヤ、マンゴーだね」刀根麻里子「デリンジャー」などはまさに上質シティポップ。南野陽子「悲しみモニュメント」は情感系。中村雅俊「パズル・ナイト」はド直球シティポップ、先に挙げたラ・ムーの編曲も含め実に私が好む曲の多くを手がけている。荻野目洋子「六本木純情派」藤井一子「チェック・ポイント」まで編曲しているとなると恐ろしく引き出しが多い。もっと深掘りしてみたい作曲家である。
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