小学生の頃、剣道を習っていました。昭和45年頃のことです。
田舎の小さな小学校でしたので部員は多くはありませんでしたが、それでも10人くらいはいました。
酒田は剣道の盛んな地域でしたのでどの学校でも剣道の練習があり、大会ともなると会場に入りきれないほど選手がいたものです。
今は子どもの数も少なくなり、剣道を習う子もほとんどいなくなってしまいました。
久しぶりに小学校の体育館を訪れたら、小さな女の子が先生に稽古をつけてもらっていました。
夏、古い体育館で少女は汗をいっぱいかきながら、元気な声で打ち込みをしています。
少女のかけ声と乾いた竹刀の音、外からはうるさいほどの蝉の鳴き声がしています。
遠い夏の記憶。
なんだか無性に懐かしくなって、携帯電話のカメラで写真を撮りました。
ふと、あの頃に戻りたくなる季節、夏。
けたたましい蝉時雨は、人の魂を現実の世界から遠いあの日に連れて行ってくれる水先案内人のようです。
あの夏の日 葉 祥明 自由国民社 このアイテムの詳細を見る |