コピー、カバー、色々言い方はあるかと思うけど、
要するに他人の曲を歌い、演奏する際のちょっとした
注意点と言うかマナー的な話なんぞを様々な立場、側面から
述べてみたい。
昔は、バンドを組む際に”ゆくゆくはオリジナル曲をやる
予定だけどまずはコピー曲でスタジオに入りましょう”って
パターンが多かった。ま、今もそうか。
これは金銭のやり取りが発生していない場合。
つまり誰かのバックバンドとして仕事として呼ばれましたって
場合はお金をもらえる歌や演奏をすればいいだけの話なので
特に記述するほどのことでもない。
難しいのは仕事のような関係ではない場合。
みんなが好意で集まってる場合ね。バンドもそうだよね。
当たり前なのは”なるべく曲を覚えてくる”と言うこと。
結局これにつきちゃうんだけど、それでも程度の差は出て
しまうのは致し方ないところ。余裕がない場合も無きにしも非ずで。
そこでストレスなく進行していくための注意点的なことを書こうかと。
”ボーカル”
歌詞は完全に覚えられなくてもよい。
いや、本当は違うだろうけど、つまり手探りの様子見でスタジオに
入りますよ的な場合、演奏者から見れば演奏できるくらいに歌って
もらえればいいのだ。単語を間違えましたって言っても演奏に支障を
きたすとは思えない。
最低限、構成を間違わずに歌ってくれればよい。
繰り返しの回数、4小節空けて歌いだすとか、Gソロ明けのCメロに行く前は
ブレイクがあるとか、そういう細かなところを全部把握すること。
カラオケじゃないんでしっかり歌ってくれないとバックはボーカルに
つられちゃうからね。
キーもしっかり確認して挑むこと。
歌ってみたら”やっぱりキーを下げてください”なんてのは論外。
テンポもなるべく把握しておいた方がいい。
歌っていて違和感があったら遠慮なく要求するべき。
演奏者は歌い手の”気持ちよく歌えた”って言葉が何よりのご褒美なのだ(笑)。
コーラスやハモリがなければ成立しない楽曲の場合は事前に誰がどのパートを
歌うか決めて確認しておくこと。
この辺の詰めが甘いと各自好き勝手に歌うのでみんな同じパートを歌いかねない(笑)。
バランスの悪い音量で楽器演奏をする人の場合はそれを伝えても構わない。
歌いづらいですよと。アンプからの音量の場合は少し向きを変えるだけで
改善されたりするし、ちょうどよいところまで音量を下げてくれれば問題はない。
ただし自分もしっかり声を出すこと。生ドラムがいる時点でかなり全体の
音量は上がるのは避けられない。効率の良いマイクの使い方も重要。
自分の立ち位置も考えてみるのも良いかも。
”ギター”
もしギターソロがコピー不可能なくらい難しかったらとりあえずは
省略バージョンで良いだろう。
また音源ではギターが何本も入っている場合も多く1本では全部を
再現するのは難しい場合も多いが、やはり一番重要なところ、耳に
つくところを優先して演奏すべきである。
無くても支障がない部分などは無理に入れることもない。
またDdimなどのコードがあるとして、全弦を押さえなくともD音と
G#音の2音でディミニッシュ感は出るのでそれで対応しても良いと
思う。ベースがD音を弾けばG#音だけでもいいくらい。
やはり臨機応変に行くのが大事。
歪んだ音とクリーンな音など何種類か使う場合、”音量差”に注意する。
コード間違いも確かにNGだが、音量差と言うのも相当周りに迷惑を
かける。何かのEFを踏んだとたん爆音になって慌ててしゃがんでつまみを
直すギタリストは見るに堪えない(笑)。もっとすごいのはソロになって
EFを踏んだら音が消えるってイリュージョン。
それも含めての練習だがある程度は事前に用意しておくべき。
先のディミニッシュコードではないが、歪みの量とコード感は反比例する。
まあ、あんまりディストーションを目いっぱいかけてC#maj7を弾く人は
いないと思うけど、その辺もセンス良くいかないと何を弾いているの?
ってなりかねない。
”ベース”
ギターと同じく”ここは弾かなければいけない”と言う部分とアドリブでも
いっかと言う部分があると思うのでやはり臨機応変に。
アドリブで弾くにしても気を付ける点は3度の音でのメジャーマイナーの
区別を間違えないということ。
ここを間違えるとかなり周りに迷惑がかかる。特に歌い手に。
曲のテンポはしっかり把握しておくこと。
往々にしてドラマーはあてにならない場合もある。
イントロのスピードやサビのスピードを記憶しておくとよい。
イントロで弾いたテンポが2番以降も同じ感覚か常に意識をすると
安定した良い演奏になる。
自分だけは冷静にと言う感覚を持つと良い。
シンコペーションの位置はしっかり把握しておく。
誰かがあやふやでも指摘してあげらるように覚えておく。
古い年代の録音音源などは今と音色や奏法が変わっている場合も多々ある。
またフラットワウンド弦を使用しわざと高いポジションで弾いている、など
現代と勝手が違い不自然になる場合は現代風にアレンジしなおした方が良い
場合も多い。とにかくより自然に感じられる方を選ぶ。
やはり音量差に気を付ける。コンプなどでそろえてあげても良い結果になりやすい。
場所にもよるが他の楽器が聞こえないと言うのは往々にして”自分が何を
弾いているのか把握できるくらいに音量を上げたら他をマスキングしてしまった”
と言うことなので、音量を上げなくても聞き取れるサウンドを作ることを
心がけるべきである。
”ドラム”
構成をしっかり把握しておくこと。
繰り返しの回数やシンコペーションの位置は特に気を付けよう。
キメのオカズなどはなるべく近いように叩いてあげるのが望ましい。
なぜかと言うとボーカリストなどはそれをあてにしている場合も多い。
正確でなくてもいいのでそれっぽく叩いてあげるのがコツ。
音源がドラムマシンなどを使っていて生ドラムで再現する場合、不自然に
なる場合は思い切ってアレンジを変えてもかまわない。
その旨をメンバーに伝えよう。
ボーカルの声量を考えて叩くこと。
スネアとバスドラ、ハイハットの音量のバランスを意識すること。
廻りの音を良く聴いて気持ちを合わせようと心がけること。
”目で見る”ことも大事で楽器陣の動き(リズムの取り方やピッキングする
右手、足でのリズムの取り方)なども参考に気持ちを一つにするよう
心がける。
演奏の合間に話し合っているときなどはむやみに音を立てない。
シンバル類を立てすぎて周りに迷惑をかけない(笑)。
”鍵盤”
ギターと同じだが”もっとも重要なフレーズを優先的に弾く”。
それ以外は無理なら捨てても構わない。
シーケンスフレーズなどは似せるように弾くしかないので、それは
完全再現は不可能だとしっかり伝える。シンセ使いは魔法使いだと
思っている人もいる(笑)。
一人で弾く時は左手も非常に重要だが、バンドだとベースが低音を
弾いていることもあってもし省略しても支障が無い場合、左手を
それほど重視しなくても良い場合もある。
おそらく中域に音が集まる場合が多いかもしれないので、1khzから
8khzあたりまでを少し持ち上げた音作りも抜けて来て良いと思う。
シンセの場合は音色が多種にわたるので、それぞれで聞こえ方が大幅に
変わるので音量は特に注意したい。また立ち上がりの遅いストリングス
などは曲のテンポによってはフレーズが聴きとれなくなるので調整が
必要。
尚、キーボードアンプがある場所なら問題はないが無い場所の場合は
よく確認をするか、専用にアンプを持ち込んだ方が安心だ。
耳に近い位置に置ければ40W以上あれば大丈夫だと思う。
もちろんその前に信号は分岐してミキサー卓へライン信号を送るように
する。
ざっと思いつくままに書きなぐってみたが、オリジナルと違いカバーは
スタジオ録音を再現することが主になるので”ここだけタンバリン入ります”
とか”パーカッション入ります”とか編成が大人数にならざるを得ない時が
ある。ただ、それを全部再現しようとすると無理が生じるので、捨てられる
ところは思い切って捨てるようにしないとよほどお金をかけたプロジェクト
ならともかく素人じゃ限界があるので割り切ることがもっとも大切かも
知れない。
アニソンの生演奏なんかでも生ストリングスの再現にキーボーディスト3人
とかでやってたりするでしょ?あんなの狂気の沙汰だよ(笑)。
素人が出来るわけない。場所もそうだし。
歌う人はその辺も良く考えて、実際に再現が可能かどうかよく吟味して
廻りに頼むと言うことを心がけると良いと思いますね。
演奏者はカラオケマシンじゃないのでね(笑)。