説経節「さんせう太夫」を読む

丹鉄宮舞線(西舞鶴から宮津間)の宮津の二つ手前に「丹後由良」駅がある。車窓から、ホームに立つ看板を見ると「安寿姫と厨子王丸の里」と書いてある。
僅かな停車時間、それも私の席の窓の真横に見える。今は昔、もう随分と小さい頃に母から語り聞かせられた物語である。その頃の母の声までも一気に蘇ってきた。
幼心にも、哀しく、またコワイ印象の「おはなし」であった。

この作品は鴎外の「山椒大夫」であるが、遡れば古く、説
経節「さんせう太夫」が基になっている。中学生の頃の国
語の教科書にもあった。
旅から帰って、母の本箱に「説教節」のあったことを思
い出し、取り出してみた。他にも5編が収録されていた。
最初に「かるかや」があり、「しんとく丸」などが載っている。
古典はじっくり読むと味わい深いのだが、現代語訳付では
ないので時間がかかる。しかしながら、母はよく読んでい
たものだと今更ながら感心する。

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未だ覚めず池塘春草の夢
階前の梧葉已に秋声
などと吟じながら、飲み干す酒はほろ苦い。
来し方を振り返り、行く末を想うのも大事な精神的終活。
