夏は夜死ぬ 後半
白い太陽と乾いた風にうなされる私は、暑さに狂った記憶を惨めにも封印してしまった。
あの夏の夜と女、そしてあの行為を、もう思い出せない。
その夜、献げ物を受け取れと女に強要した。熱く勃起した私の一物は夏からの献げ物と
して、冷たい女の心に最適だった。
女は献げ物を拒み、褥に横たわるまま汗を滴りおとした。うつぶせの背と丸い尻、股間の
繁みに汗粒が流れる。裸身がいつの間にか冷たい汗の膜に覆われたではないか。
濡れた肌を苛む私は狂っていたのだ。私の抱擁から逃れようと、女は裸身をねじ曲げ褥
から逃げる。そして部屋の底でのたうつ私をさげすみ、一物の熱さをののしる。
女よ、なぜ暑さを受け入れないのか、お前は死者だと私は反論した。そして、部屋には
男と女の息がむせる。私はむさぼり、女は黙った。
熱いたぎりは冷たい汗と混じりあわなかった。汗が冷たく滲み肌が青く光るので、私は女
が死体と知った。夏の夜に狂ったのは女と私、死者と生者が死姦に迷った。
悲鳴が聞こえた。遠くから微かにブブブイーーン、ブイイブイーン
女よ、今あの声を聞いただろう。
黒い海原のはるか南からの叫び。
風の巻く夜の沖の冷たい波間に海獣が啼いて漂う。
彼は波間に隠れ現れ、力尽きて死ぬ。最期の叫びが、
今お前の部屋に届いたのだ。
夜の海流に死骸が流れ、沈み、海底に消えた。
女よ、死に路をさまような。悲鳴はお前の旅立ちの祝福なのだ。
いま夏が死んだ。 (了)
(長編詩です。これが最初の投稿ですが、後半です。前半は明日10月19日にブログに
出稿します。順序を逆にしたのは、日付の新しい投稿が先に読まれる為です。
全体を部族民通信のHP、左のブックマークから入る、で照覧下さい)
白い太陽と乾いた風にうなされる私は、暑さに狂った記憶を惨めにも封印してしまった。
あの夏の夜と女、そしてあの行為を、もう思い出せない。
その夜、献げ物を受け取れと女に強要した。熱く勃起した私の一物は夏からの献げ物と
して、冷たい女の心に最適だった。
女は献げ物を拒み、褥に横たわるまま汗を滴りおとした。うつぶせの背と丸い尻、股間の
繁みに汗粒が流れる。裸身がいつの間にか冷たい汗の膜に覆われたではないか。
濡れた肌を苛む私は狂っていたのだ。私の抱擁から逃れようと、女は裸身をねじ曲げ褥
から逃げる。そして部屋の底でのたうつ私をさげすみ、一物の熱さをののしる。
女よ、なぜ暑さを受け入れないのか、お前は死者だと私は反論した。そして、部屋には
男と女の息がむせる。私はむさぼり、女は黙った。
熱いたぎりは冷たい汗と混じりあわなかった。汗が冷たく滲み肌が青く光るので、私は女
が死体と知った。夏の夜に狂ったのは女と私、死者と生者が死姦に迷った。
悲鳴が聞こえた。遠くから微かにブブブイーーン、ブイイブイーン
女よ、今あの声を聞いただろう。
黒い海原のはるか南からの叫び。
風の巻く夜の沖の冷たい波間に海獣が啼いて漂う。
彼は波間に隠れ現れ、力尽きて死ぬ。最期の叫びが、
今お前の部屋に届いたのだ。
夜の海流に死骸が流れ、沈み、海底に消えた。
女よ、死に路をさまような。悲鳴はお前の旅立ちの祝福なのだ。
いま夏が死んだ。 (了)
(長編詩です。これが最初の投稿ですが、後半です。前半は明日10月19日にブログに
出稿します。順序を逆にしたのは、日付の新しい投稿が先に読まれる為です。
全体を部族民通信のHP、左のブックマークから入る、で照覧下さい)