(ナナオのコタロウ1から続く)
ナナオのコタロウは土砂崩れに巻き込まれ建設現場の土管に埋もれてしまった。発見され、シリツ病院アイシーユー(集中治療ユニット)におしこめられた。同病院で付添婦として患者さんを見ているトメ女は筆者(トライブスマン)にかく語った。
「あの子(コタロウ)はアイシーユーにスタスタ歩いて入ったのよ、そんな患者はじめて。すぐにベッドに寝かされてゾンデ(生体信号の検査具)を身体のあちこち貼られた。
心拍、血圧、体温など生きるに必要な信号が全てゼロ。
数字が正しいのなら冷血人間なのよ。婦長さんは機械の調子が悪いといいながら、ゾンデをすべて剥ぎ取ったんです。しかし私はあの子を見ていたから知っているのだけれど、機械は正しかった。彼の手を触って驚いたけど、冷たい、体温はゼロ。そして心拍も脈拍もない」
続く発言はそれ以上に驚くべき秘密だった。
「呼吸しない目は瞬きしない」
それはまさに死人ではないか。
無酸素状態で地中に12時間閉じこめられたとはいえ、この状態は過酷すぎる。それでもコタロウは歩き、ベッドに寝てはいるが目を開けて上を向け、何やらをみている。外見を見るだけであれば、彼は生きている。しかし生体信号は死を示している。コタロウは生きる死人なのか。
トライブスマンは、トメ女の知らないコタロウの秘密を嗅ぎつけていたのだ。その秘密行動をして「ナナオのコタロウ」の伝説を創った。
シリツ病院の夜更けは早い。8時の消灯となった。
コタロウは目玉をグルリと回して、病室の周囲、廊下の行き交い密かにを伺った。人の声は聞こえないし足音も途絶えた。
看護師付添婦などが消えたののだ。立ち上がってアイシーユーからふらり抜け出す。服装は重篤患者の白衣パジャマそのもので、この服装は病院では一向に目立たない。抜け出すに好都合だ。
裏口からシリツ病院を抜け、バイパスを渡りJRトヨタ駅にひた走る。ひた走っても息は乱れず汗など出ない。白衣パジャマが一人歩きすればおかしいので、行き交う歩行者に止められないかとの質問は無用だ。夜8時であればいまだ人通りは残る。ちらほら行き交う帰宅者はひた走る白衣を見ていぶかしがるが声を掛けない。
無言のままコタロウはトヨタ駅連絡橋を抜け、南口をひたひた走った。都立ナナオ公園入り口のバッティングセンターを目指していたのだ。
(ナナオのコタロウ3に続く)
ナナオのコタロウは土砂崩れに巻き込まれ建設現場の土管に埋もれてしまった。発見され、シリツ病院アイシーユー(集中治療ユニット)におしこめられた。同病院で付添婦として患者さんを見ているトメ女は筆者(トライブスマン)にかく語った。
「あの子(コタロウ)はアイシーユーにスタスタ歩いて入ったのよ、そんな患者はじめて。すぐにベッドに寝かされてゾンデ(生体信号の検査具)を身体のあちこち貼られた。
心拍、血圧、体温など生きるに必要な信号が全てゼロ。
数字が正しいのなら冷血人間なのよ。婦長さんは機械の調子が悪いといいながら、ゾンデをすべて剥ぎ取ったんです。しかし私はあの子を見ていたから知っているのだけれど、機械は正しかった。彼の手を触って驚いたけど、冷たい、体温はゼロ。そして心拍も脈拍もない」
続く発言はそれ以上に驚くべき秘密だった。
「呼吸しない目は瞬きしない」
それはまさに死人ではないか。
無酸素状態で地中に12時間閉じこめられたとはいえ、この状態は過酷すぎる。それでもコタロウは歩き、ベッドに寝てはいるが目を開けて上を向け、何やらをみている。外見を見るだけであれば、彼は生きている。しかし生体信号は死を示している。コタロウは生きる死人なのか。
トライブスマンは、トメ女の知らないコタロウの秘密を嗅ぎつけていたのだ。その秘密行動をして「ナナオのコタロウ」の伝説を創った。
シリツ病院の夜更けは早い。8時の消灯となった。
コタロウは目玉をグルリと回して、病室の周囲、廊下の行き交い密かにを伺った。人の声は聞こえないし足音も途絶えた。
看護師付添婦などが消えたののだ。立ち上がってアイシーユーからふらり抜け出す。服装は重篤患者の白衣パジャマそのもので、この服装は病院では一向に目立たない。抜け出すに好都合だ。
裏口からシリツ病院を抜け、バイパスを渡りJRトヨタ駅にひた走る。ひた走っても息は乱れず汗など出ない。白衣パジャマが一人歩きすればおかしいので、行き交う歩行者に止められないかとの質問は無用だ。夜8時であればいまだ人通りは残る。ちらほら行き交う帰宅者はひた走る白衣を見ていぶかしがるが声を掛けない。
無言のままコタロウはトヨタ駅連絡橋を抜け、南口をひたひた走った。都立ナナオ公園入り口のバッティングセンターを目指していたのだ。
(ナナオのコタロウ3に続く)